ナワシロイチゴ
 私の脳は、ある時間、何かについて集中的に考えることは得意だが、常にいくつかのことを気に留めておくことは苦手みたいである。ナワシロイチゴの写真は2007年の3月に撮ってあり、「果実は6月に熟す」ということを知って、「6月になったら実の写真を撮ろう」と決め、その6月を3度も経験しているが、そのたびに忘れている。
 何かを記憶しておくことが元々不得意である上、私の脳は(多分)歳相応に衰えているので、益々覚えるのが苦手となり、物忘れも酷くなっているのだと思う。 
 最近のことは忘れるが、若かりし頃のことは想い出として残っているものが多い。浪人時代、親しい予備校仲間ができ、彼らとキャンプへ行ったり、ドライブしたりした。グループは男子12、3人、女子5、6人ほどいて、野球チームを作って、草野球大会に参加したり、毎月のように飲み会があり、クリスマスパーティーもあり、女子は可愛くて、そりゃあもう楽しい浪人生活であった。人生で一番楽しかった頃かもしれない。
 グループの中には三浪、四浪の人もいて、彼らからキャンプの仕方、飲み方、遊び方を教わった。彼らから受験勉強を教わった記憶は無い。しかし、受験勉強より大事な人生勉強を教わったのである。今思えば、感謝すべきことだと思う。ありがとう。

 ある日、ドライブの途中、休憩していた道端で、「これノイチゴだよ」とグループのリーダー格である先輩から教わった。「食べてみな、甘酸っぱいから」と彼に言われ、食べてみた。確かに甘酸っぱかったことを覚えている。もしかしたら、それがナワシロイチゴだったかもしれない。青春の甘酸っぱい想い出である。

 ナワシロイチゴ(苗代苺):野草
 バラ科の落葉低木 日本各地に自生 方言名:イチュビ
 名前の由来が広辞苑にあった。「田植の頃に熟すのでいう」とのこと。沖縄には田んぼがごく少なく、田んぼを見たことのないウチナーンチュも多い、で、「何で田植の頃に熟すからナワシロなんだ?ナワシロって何だ?」と疑問に思うであろう。ナワシロとは苗代と書き、「水稲の種を蒔いて苗を仕立てるところ」(広辞苑)とのこと。
 花弁は淡紅色で真っすぐ立ったまま開かない。花弁と同程度の大きさのがく片が反り返っている。開花期は、広辞苑には初夏とあったが、文献の写真は2月、私の写真は3月と5月、沖縄では冬の終わりから初夏にかけて咲いているようである。
 実は濃赤色で、酸味があり食べられる。結実は初夏。

 花
 記:島乃ガジ丸 2010.9.6  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
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