ナピアグラス・ネズミノオ
 植物に動物の名前をつけたものは多くある。ウシ(牛)ハコベ、トラ(虎)ノオ、ウ(卯)ノハナ、リュウ(竜)ノヒゲ、ヘビ(蛇)イチゴ、ウマ(馬)ゴヤシ、ヒツジ(羊)グサ、サル(猿)スベリ、ケイ(鶏)トウ、イヌ(犬)マキ、イ(亥)ノコヅチなどなどいくらでも例を挙げることができる。
 逆に、動物に植物の名前をつけたものがあるだろうかと考えた。・・・ある。タケトラカミキリ、バナナセセリ、ホウズキカメムシなどが思い付く。イナゴもそうだ。蝗は稲子とも書く。蛾にはガジュマルハマキモドキ、イヌビワハマキモドキ、セスジスズメなどというのもある。とはいえ、「動物に植物の名前」よりも「植物に動物の名前」の方が圧倒的に多かろう。地球上に出現したのは植物の方がずっと先なのに、人間の目には植物よりも動物の方が目立ったということであろう。

 今回紹介するネズミノオは「鼠の尾」と表される。これで、上に挙げた11種と合わせて十二支が揃った。ナピアグラスは十二支とは関係無いが、動物の名前には関係ある。

 ナピアグラス:牧草・雑草
 イネ科の多年草 アフリカ原産 方言名:ペルーソー、テルーソー
 ナピアグラスは英語かと思っていたが、英語ではelephant grassというらしい。エレファントグラス、象の草、象が好んで食べる草ということなのであろう。ナピアグラスについては資料が無かった。学名でも無い。どこかの国の言葉なのであろう。
 方言名のペルーソーもテルーソーも日常語には無い面白い名前だが、由来は不明。南米ペルーにゆかりがあるのか、照屋(てるや)さんが初めて導入したからなのか。 
 最近はあまり見ないが、20年ほど前までは那覇市でも牛を飼っている農家があって、牧草地を見ることができた。当時はそれがナピアグラスとは知ることも無かったが、文献の写真を見れば、測量のバイトで、こんな草はよく見たなと思い出す。


 ネズミノオ(鼠の尾):雑草
 イネ科の多年草 本州以南、南西諸島、インド、他に分布 方言名:シプクサー
 細長い穂を鼠の尾に見立てての名前。ウチナーグチに直訳するとヱンチュヌジューとなるが、ウチナーンチュには鼠の尾には見えなかったらしい。シプはシプサン(粘り強い)というウチナーグチからきており、クサーは草で、粘り強い草という意味になる。なかなか切れない、または抜けないということかもしれない。
 夏から秋にかけて日当たりの良い道端や空地などで普通に見られる雑草。直立して高さ30〜60センチほどになる。淡緑色の穂は秋に出る。
 記:島乃ガジ丸 2006.9.25  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
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