ナンゴクデンジソウ
 那覇市首里末吉にある末吉公園は、沖縄島南部の原生林が残る自然豊かな公園で、私が最も多く散歩している公園でもある。2、3年前だったか、公園の一角にビオトープなるものが作られた。「ビオトープ?何のこっちゃい。」と思って調べると、「前略・・・公園などに作られた、野生の小生物が生存できる環境」(広辞苑)とのこと。
 末吉公園のビオトープはとても規模が小さい。小学校の校庭に作られた池(私が小学校の頃はそういうのがあった)程度もない。まあ、小さくても野生の小生物が生存できるには違いない。オタマジャクシとか、ヤゴとかはいるに違いない。
 で、ある日、その池を観察した。オタマジャクシはいた。その他にはヤゴも含め動物は発見できなかった。「この規模ではなぁ、難しいだろうなぁ。」と思った。
 その時、足元にカタバミが蔓延っているのに気付いた。「除草しないんだ。それにしてもこのカタバミ、池の中にまで入っているが、普通のとは違うのか?」と思った。よく見ると、普通のとは違うみたいであった。写真を撮って、調べる。

 デンジソウは、カタバミモという別名もある。方喰藻ということだ。私がカタバミと見間違えたのも肯けるはず。シダ植物ということなので、種は遠いが。

 ナンゴクデンジソウ(南国田字草):野草
 デンジソウ科の多年生水生シダ 奄美大島以南の琉球列島に分布 方言名:ターグサ
 名前の由来は、資料が無くても想像が付く。葉柄の先に4つの葉が十字状に付き、それが田の字に見えることから田字草。広辞苑にもそのように書かれてあった。ナンゴク(南国)は南方(琉球列島)に分布することからだと思われる。
 本州〜九州にはデンジソウがある。デンジソウとナンゴクデンジソウ、両者は見た目、ほとんど同じらしいが、胞子のう果が葉柄の基部から出るのがナンゴクデンジソウで、葉柄基部の1センチ上辺りから出るのがデンジソウとのこと。
 分布について詳しく述べると、ナンゴクデンジソウはアジアの熱帯域、琉球列島、九州南部。デンジソウはヨーロッパからアジア東部、本州〜九州、奄美大島、伊是名島、西表島とのこと。沖縄島に無くて、伊是名や西表にあるというのは面白い。
 細い根茎が水中、または泥中を這って広がる。根の節々から葉柄を出し、その先に葉を付ける。葉は水面の上に出る。そうは見えないがシダ植物、胞子のう果を持つ。
 池や水田に生え、害草とされている。
 記:島乃ガジ丸 2010.10.16  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
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