ムラサキイノコズチ
 望まない子供を妊娠した女性が堕胎する。私はキリスト教徒では無いが、それはやはり悲しいことだと思う。宿った命は天からの授かりものだと思うからである。
 イノコズチの根から作られる薬が堕胎薬にもなることを知って、昔から望まない子供を宿して、その命を誕生させなかった女性はいたんだなあと思った。そういえば、水子地蔵なんてのもあるし、そういう女性のためのお寺もあったんだと、改めて認識する。
 先週土曜日(12月17日)、結婚前にお腹の大きくなった若い女を囲んで、「ふしだら娘を祝う会」というものが、そのふしだらな娘の親の家で行われた。ふしだら娘とは、彼女が生まれた時から親交のある私は喜んで参加した。ふしだら娘も、その父も母も幸せそうであった。楽しい飲み会となった。ふしだら娘のお腹から、あと半年後には生まれてくる子供は、周りの人々に大いに望まれてこの世にやてくるのである。

 ムラサキイノコズチ(紫牛膝):野草
 ヒユ科の多年生草本 方言名:サシギ
 広辞苑に、イノコズチを表す漢字が牛膝とあった。漢方薬に牛膝(ゴシツ)というのがあり、それは本種と近縁のヒナタノイノコズチの根を乾燥させたものらしい。そこから、牛膝がイノコズチを表すことになり、本種は全体が紫に見えるので紫牛膝となる。
 のであるが、イノコズチはイノコヅチと表記し、漢字は「亥の子槌」ではないかと私は考える。これも広辞苑からの情報であるが、10月亥の日に行われる収穫祭の一つに亥の子(いのこ)というのがあり、その祭りに使われる道具を亥の子槌(いのこづち)というらしい。亥の子槌は、「縄を堅く固めた束」(広辞苑)だとある。植物のイノコズチの花穂の形は、「縄を堅く固めた束」に似ていると私は思うのだが、正確なところは不明。
 方言名のサシギは解りやすい。ムラサキイノコズチの果実の苞には棘があり、衣服にくっつきやすいところから、刺す木という意味のサシギとなっているのだろう。
 高さは30センチから1メートルくらいになる。どこにでも見られる雑草。長い花茎の先に穂状に花をつける。花はごく小さい。本種の根も薬用になる。他に、近縁種であるハチジョウイノコズチとカツウダケイノコズチは野菜として食されるとのこと。
 記:島乃ガジ丸 2005.12.18  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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