メヒシバ、オヒシバ
 沖縄の短い冬の間、しばしその鳴りを潜めていたメヒシバさんが、3月に入ってボチボチ広がり始めた。雑草は、オニタビラコ、カタバミ、ノゲシなど冬でも元気に私の畑に蔓延っているが、去年の暮れまで畑を覆っていたメヒシバは冬、ちょっと休んでいたみたいである。このメヒシバ、根こそぎ引き抜かないと消えてはくれないので、厄介な雑草の一つとなっている。厄介という意味では、人間の女と変わらない。
 オヒシバは髭根が多く、地面にしっかりと掴まっているので、それを根こそぎ引き抜くには力が要る。それに比べるとメヒシバは地面に掴まっている根の数はずっと少ない。ところが、メヒシバは茎を伸ばし、茎の節から根を出して周りにどんどん広がる。例えば、オヒシバを引き抜くのに100キロの力を要するとしたら、メヒシバは10キロで済む。しかし、その10キロの作業を100回は繰り返さなければならない。しかも、メヒシバの根は弱いので、中途からすぐ切れてしまう。根が残って、そこからまた生えてくる。そういった厄介なところもまた、人間の女と変わらない。・・・かもしれない。

 オヒシバ(雄日芝):野草
 イネ科の一年生草本 方言名:チカラグサ
 ヒシバという草があるのかと調べてみたが、参考にしているどの文献にもヒシバの記載は無かった。オヒシバもメヒシバも日向に多くみかけるので、ヒシバとはおそらく、日向の芝といったほどの意味なのであろう。本種はメヒシバに比べて全体的に力強く、穂も太いのでオヒシバという名前となっているとのこと。であるが、両者は属が違う。
 細い髭根が多く伸びて引きにくいことからチカラグサという別名もある。方言名はそのチカラグサ。地中にがっしりと根を張って、逞しさを感じる。
 道端、空地、野原、畑などよく陽のあたる場所で見かける。高さは20〜50センチ。夏から秋にかけて緑色の花穂をつける。花穂は数本あり、傘状に開く。


 メヒシバ(女日芝・雌日芝):野草
 イネ科の一年生草本 方言名:ガギナ
 「オヒシバに比べると、丈が高く、ほっそりとし弱々しげな感じがするのでメヒシバという名前」とある。そのオヒシバはまた、前述の通り「メヒシバに比べて全体的に力強く、穂も太いのでその名前」とある。メヒシバとオヒシバ、いったい、どっちが先?
 根元から多く分枝して、茎の節から根を出してどんどん広がる。夏の頃、放っておくとあっという間に広がり、駆除に難儀する。
 道端、空地、野原、畑などよく陽のあたる場所でよく見かける雑草。乾草にして、馬の食料とする。高さは40〜80センチ。夏から秋にかけて緑紫色の花穂をつける。
 記:島乃ガジ丸 2006.3.7  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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