マツバゼリ
 その昔、大学で5年間(留年したので)東京に住んでいた。東京では毎日の食事に沖縄にいる頃と違いがあった。沖縄料理でよく使う三枚肉(皮付き豚のバラ肉)、ソーキ(豚の骨付きアバラ肉)、テビチ(豚足)、島豆腐などが手に入らない。他にも、ゴーヤー、ナーベーラー(ヘチマ)、カステラカマボコなども手に入らない。
 でも、それらの代わりに、沖縄にいた頃にはあまり、あるいは全く口にしたことの無い食材が手に入った。フキやゼンマイなどの山菜の類がお初だったと記憶している。スズメの姿焼、クサヤ、フナ寿司、メフンなども初。シシャモやワカサギも沖縄で食ったことは無かったと思う。マツタケ(値段が高いので当然)、シメジ、エノキダケなどのキノコ類やタケノコなども母はあまり食卓に出さなかった。沖縄には少なかったのだろう。
 大学の頃、飲食店でバイトしていて、最初はウェイターとして入ったのだが、私はお茶漬けと釜飯の担当をした。簡単な料理だったのと、自慢になってしまうが、バイト仲間の中では「手先の器用な奴だ」と店長に認められたからでもある。
 お茶漬けと釜飯に共通して用いる野菜がある。共通して料理の上に最後に添える野菜、ミツバ。ミツバも母の料理に出ることは少ない野菜だった。ミツバは他に、アサリのお吸い物や茶碗蒸しにも使われる。良い香りがすると思った。

 マツバゼリ、葉を揉むとセロリのような匂いと文献にあったが、私にはミツバの匂いのように感じられた。その匂いから食えそうな感じがしたが、私が参考にしているどの文献にも食えるとは書かれて無い。そういうのを食うほど私は食いしん坊では無い。

 マツバゼリ(松葉芹):野草
 セリ科の一年草 南アメリカ原産 方言名:パリウイキョウ(宮古)
 名前の由来は『沖縄植物野外観察図鑑』に「糸状の葉が松の葉に似ていることから」とあった。葉は2〜4回羽状に分裂し、その最終裂片は糸状になって松の葉に似る。
 草丈は30〜70センチ程になる。主に畑地の雑草。「葉を揉むとセロリに似た香り」と文献にあったので試してみた。セロリ、のような匂いと言われればそうだが、私にはミツバの匂いにも似ていると感じられた。学名を見ると、
 マツバゼリ Apium leptophyllum F. Muell.
 セロリ Apium graveolens var. dulce
 ミツバ Cryptotaenia japonica
でマツバゼリとセロリは同属だが、ミツバは同じセリ科だが別属。私の鼻より『沖縄植物野外観察図鑑』の著者の鼻が確かなようである。
 葉腋から花茎を出しその先に10個前後の花をつける。花はごく小さく、色は白。開花期は、倭国では春から秋のようだが、沖縄では2月から3月に咲いている。

 花
 記:島乃ガジ丸 2012.3.31  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
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