クロバナツルアズキ
 去年の秋、埼玉在の友人Kと宮古諸島の旅をした。旅の二日目は飛行機で多良間島へ渡った。宿まで30分程歩くというので、同行のKは車で行き、私は徒歩。
 海岸沿いの道を宿方面へ向かう。多良間島の風を感じながらのんびり歩く。出会いたいと常々思っていた動物に会えた。ヤシガニ。食べてみたいとも思っていたが、出会ったヤシガニは小さく、食べるには肉量が少なかろうと思った。それにもう既に死んでいた。いつ死んだか知れず、食べて腹でも壊したらと思って拾わなかった。

 ヤシガニに出会う少し前、道路沿いの植樹帯に目立つ植物を見つけた。それはツル植物で、植栽された低木に絡みついていた。目立ったのは花の色が黒だったからだ。子供の頃に、「黒色の花はこの世に存在しない」と聞いたことがあったので、「ほう」と思ったのである。子供の頃聞いた歌謡曲『黒い花びら』もついでに思い出した。
 『黒い花びら』って誰が歌っていたっけ?「くーろーいーはなびらー」の後の歌詞は何だったっけ?などと考えながら写真を撮る。「あるじゃねーか、黒色の花」と思ったのだが、よく見ると真っ黒では無い。文献には黒紫色とあった。

 これまであちらこちら散策しているが、このHPを始めた2004年からは公園の草木も路傍の草木にも関心を持って歩いていたが、こんだけ目立つのにクロバナツルアズキ、多良間島で初めて出会った。多良間島の道路の植栽帯にはたくさん生えていた。

 クロバナツルアズキ(黒花蔓小豆):野草
 マメ科の多年草 北アメリカ原産の帰化植物 方言名:なし
 名前の由来は資料が無く不明だが、容易に想像はつく。黒い花の咲く蔓性の小豆、ということで、黒花蔓小豆という漢字も私の想像だが、おそらく正解。
 アズキと同じくマメ科だがアズキとは別属。アズキはササゲ属で本種はインゲン属。本種の同属にはインゲンマメがあり、アズキと同属にはハマササゲがある。
 本種は飼料として持ち込まれたようだが、栽培されていたものが逸出し、現在は路傍や野原の雑草となっているとのこと。であるが、私が日常散策するような場所、那覇市や浦添市、宜野湾市、西原町、中城村などの路傍や野原、及び公園などでお目にかかったことは無い。ヤンバル散策でも見ていない。去年の秋旅の多良間島で出会った。
 クロバナ(黒花)と名はあるが、花色は真っ黒ではなく黒紫色。開花期については文献に記載が無く不明。文献の写真は6月で、私が見たのは9月。
 草全体に毛が密生する。豆が人の食用になるかどうかも資料が無く不明。
 ちなみに学名、
 クロバナツルアズキ Phaseolus atropurpureus DC.
 インゲンマメ Phaseolus vulgaris
 アズキ Vigna angularis
 ハマササゲ Vigna marina

 実
 記:島乃ガジ丸 2013.7.11  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
 『ニッポンの野菜』丹野清志著、株式会社玄光社発行
 『藤田智の野菜づくり大全』藤田智監修、NHK出版編
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