コトブキギク
 倭人が沖縄に来て、道端に菊に似た白い花がたくさん咲いているのを見つけたら「わー、きれい」って言うかもしれないが、それは概ねサシグサ(センダングサ類)である。サシグサは道端や空地、野原や畑に勝手にやってきて、勝手に増える鬱陶しい雑草である。植物に対しては概ね優しい私も、畑にサシグサを見つけたらすぐに抜いている。
 一ヶ月ほど前のある日、新都心の、人通りのほとんど無い裏道を歩いていたら、たくさんのサシグサが、我が物顔に白い花を咲かせている空地があった。その片隅に、サシグサとは趣の違う、菊に似た白い花を見つけた。きれいな白色というわけでは無いが、全体に清楚な感じがする。サシグサのような煩さが無い。長い茎の先にポツンと小さな花を咲かせている様は、首の長い美人の立ち姿と言っても良いくらいである。

 「おぬし何者?」と問うまでも無く、私はその草の名前を知っていた。2年前の11月に石垣島で見つけ、写真を撮り、すでに調べも済んでいた。今年の6月にも首里の道端で見つけ、写真を撮っている。「何者?」は、雑草とするには惜しい見た目であるが、その名もまた、雑草とするには勿体無い名前となっている。コトブキギク。

 コトブキギク(寿菊):野草
 キク科の多年草 熱帯アメリカ原産の帰化植物 方言名:なし
 名前の由来は参考にしている文献に無く、不明。広辞苑に『寿草(ことぶきそう)』というのがあり、「これのことか。」と思ったが、寿草は福寿草の異称とのこと。福寿草(ふくじゅそう)はキンポウゲ科の多年草で、調べた限りでは沖縄に産しない。
 キク科の植物を調べていると、「舌状花」とか「管状花」とかいう言葉が出てくる。広辞苑にそれぞれの説明があるが、私はよく理解していない。管状花は何となくイメージできるが、舌状花は「合着した花冠が舌状に発達した花」とあって、それが普通の花とどう違うのかが認識できていない。認識できないまま書くが、本種は舌状花とのこと。
 茎は斜めに立ち上がって、長さ30〜60センチほどになる。舌状花は黄から白色と文献にあるが、私が見たものは概ね白色で、少し黄味がかったものもあった。開花期についての資料は無いが、私は6月、10月、11月に見ている。夏から秋としておく。

 花
 記:島乃ガジ丸 2007.10.26  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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