カスマグサ |
本種は前回と前々回に紹介したカラスノエンドウやスズメノエンドウによく似ている。見た目はよく似ているのだが、名前は全然似ていない。「何故だ?」と思う。その答えはしかし、とても単純、「えっ!そりゃあないだろう」と可哀そうになるほど。久米島が、沖縄諸島と宮古諸島の間にあるのでオミマ島と名付けられるようなもの。 マメ科の植物の中には根粒菌を持ち、空中の窒素を固定する性質を持つものがある。根に窒素を固定した根粒ができる。なので、その性質を持った植物の生えている土壌には窒素が豊富ということになる。窒素は植物の三大栄養素の一つで、植物の茎や葉の成長に欠かせないもの。私の畑(宜野湾の方)でも、去年ラッカセイを植えて収穫した後にジャガイモを植えたら、地上部がすくすくと育ち、収穫も多かった。 シロツメクサ(クローバー)は緑肥植物として有名だが、日本では他にレンゲソウやウマゴヤシなども使われるようだ。緑肥とは「草木の葉や茎を鮮緑のまま耕土に施し、栽培植物の栄養とする肥料。空中窒素を固定するマメ科の作物を使うことが多い」(広辞苑)で、その通り、シロツメクサもレンゲソウやウマゴヤシもマメ科。 カスマグサ、カラスノエンドウ、スズメノエンドウもマメ科で、根粒菌を持つ。よって緑肥となる。それらは春、私の畑に蔓延るが、彼らは農夫の味方となる。 カスマグサ(カス間草):野草 マメ科の越年草 ヨーロッパ原産 方言名:カスマグサ 名前の由来は『沖縄植物野外観察図鑑』に「形がカラスノエンドウとスズメノエンドウの中間型を示すので、頭文字のカとスをとってつけたもの」とある。「カ」ラス「ス」ズメのマ(間)の草ということ。ふむ、中間ならヒヨドリエンドウで良いと思うが。 草丈については、どの参考文献にも記載は無かったが、私の観察した限りでは他のものに絡みついて30〜50センチほどの高さになっている。スズメノエンドウは草丈30〜70センチと文献にあるが、私の観察した限りではこれも30〜50センチほど。スズメノエンドウと本種は混生して、互いに絡み合っているので、見た感じでは両者ほぼ同じ高さなのである。私の畑ではコウブシ、ルリハコベなど背の低い草しか無いが、近くに背の高い草でもあれば、それに絡みついて70センチまで伸びるのかもしれない。 スズメノエンドウに比べると花数は少ない。花色は淡紅、開花期は春。畑や道端、野原に普通の草で、春になると勝手に出てくる。全草が飼料、緑肥となる。 スズメノエンドウ、カラスノエンドウとの見分け方は、豆果の種子の数が本種は4個内外、スズメノエンドウは概ね2個、カラスノエンドウは10個内外。 学名はカスマグサ Vicia tetrasperma スズメノエンドウ Vicia hirsuta カラスノエンドウ Vicia sativa subsp. nigra Vicia属の和名はソラマメ属で、私の大好きなソラマメも同属のVicia faba ちなみに、エンドウは別属で、Pisum sativum L. 花 実 右スズメノエンドウ、左カスマグサ |
記:島乃ガジ丸 2012.8.5 ガジ丸ホーム 沖縄の草木 |
参考文献 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行 |