インドヨメナ |
勉強嫌いだった私だが、小学校5年から中学にかけてたくさんの本を読んだ。本といっても、シャーロックホームズとか怪盗ルパンとかの推理物、冒険物、SF物などがほとんどであったが、文芸書といわれる本も多く読んだ。森鴎外、夏目漱石、芥川竜之介、などの作品を読んでいる。が、不思議なことにどれ一つとしてその内容を覚えていない。あらすじが言えるものは『蜘蛛の糸』、『走れメロス』などごくわずかである。伊藤左千夫の『野菊の墓』も読んでいるが、この内容についてはまったく覚えていない。 4、5年前、静岡を旅した際に、修善寺温泉に一泊した。予定の行動では無く、前夜、磐田在の才媛K穣に「いい所よ」と勧められてのことであった。予定には入ってなかったので修善寺の知識は皆無。宿の予約もしないまま夕方修善寺駅に到着。駅の観光案内所でホテルを紹介してもらい、ついでに観光マップを貰って、途中の居酒屋で食事(時間が遅いのでホテルでは食事の用意ができないとのこと)して、ホテルに着き、ゆったりと温泉を味わった後、ワンカップをちびりちびりやりながらマップを観る。 マップには知っている地名があった。天城峠。石川さゆりの唄『天城越え』がすぐに思い浮かぶ。「いや待てよ。もう一つ何か有名なものがあったぞ。」とボケた脳味噌に微かに記憶が蘇る。「そうだ。映画だ。山口百恵主演の映画だ。確か、相手役の三浦友和と天城峠でどーのこーのというのがあった。」と思い出し、「さて、その映画、何ていう題だっけ、有名な文芸作品の映画化だったはずだ。」とまた、しばらく記憶を辿る。が、思い出せない。「伊藤左千夫の『野菊の墓』だったっけかなー。」と曖昧なまま旅を終え、そして、「曖昧なまま」は4、5年後の今日この日まで、ずっと曖昧なままであった。 ヨメナを辞書で引くと、別称にノギクとある。野菊を同じく辞書で引くと、「1、野に咲く菊。ノコンギク・ノジギクなど。2、ヨメナの別称。」とあった。というわけで、今回紹介するインドヨメナも野菊の仲間なのだと私は知った。そして、ふと、4、5年前の「曖昧なまま」であっとことを思い出したのであった。で、調べた。 山口百恵と三浦友和が淡い恋を演じた映画は『伊豆の踊子』、川端康成であった。『野菊の墓』の舞台は東京。墓の場所は市川。また、『野菊の墓』の恋は(洒落ではない)濃い。『伊豆の踊子』のように淡くは無い。したがって、場所も内容もまるっきり違う。何でまた、この二つを混同したのか、自らの知識と教養の無さを恥じるばかりである。 私は一応、大学は文学部日本文学科なのだが、しかしまあ、これでは全く、日本文学科卒なんて言えたもんじゃない。他の日本文学科出身の方々に申し訳ないことである。 インドヨメナ(印度嫁菜):野草 キク科の多年生草本。分布は熱帯、亜熱帯各地。方言名:ヌヂク 根茎が地中を這い繁殖するところはヨメナと一緒だが、インドヨメナは本土では見ないらしい。高さ30cmほどに花茎を伸ばし、淡青色の花をつける。かわいい花で、若芽は食用ともなるが、雑草扱いされている。わざわざ栽培するほど美味しくは無いのだろう。文献に開花期は記載されていないが、秋から冬にかけて、私の畑で見ることができる。雑草扱いされているが、リュウキュウコスミレと並んで嫌とは思わない野草の一つ。 嫁菜は、美しくて美味(深い意味は無いと思う)ということからきているとある。印度はインドからやってきたということであろう。学名にKalimeris indicaとある。 ついでにヨメナ ヨメナ(嫁菜):野草 キク科の多年生草本。中部地方以西の本州・四国・九州に分布。 どうやらヨメナは沖縄にはないらしく、どの文献にも記載が無い。で、広辞苑から。 「キク科の多年草。山野・路傍に自生。高さ50〜60センチメートル。初秋に淡紫色の頭花を開く。若葉は食用。」同じく広辞苑で野菊を引くと、「野に咲く菊。ノコンギク・ノジギクなど。ヨメナの別称。」とあった。『野菊の墓』の野菊はヨメナのことかもしれない。 学名をネットで調べた。Kalimeris yomena。 |
記:島乃ガジ丸 2005.4.5 ガジ丸ホーム 沖縄の草木 |
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行 |