ホウロクイチゴ
 今年(2012年)3月に伊平屋島、伊是名島の旅をした際、伊是名島でホウロクイチゴを見つけた。旅先なので手元に植物図鑑は無かったが、「野原の食えるもの」には大きな関心を持っている私なので、図鑑の写真からその姿を記憶していた。
 伊是名島のホウロクイチゴ、花は多く咲いていたが、残念ながら、私が大いに関心を持っている対象の果実が着いていない。「時期が早いのだな、今は花の盛りということか」と、ホウロクイチゴの果実を食うことは、伊是名島では諦めた。

 4月には粟国島を旅した。28歳の美女(恋人では無い)と2人旅(3人旅の予定がたまたまそうなった)であった。2人で島を散歩しながら「3月に花なら、4月には実も着くだろう」と、ホウロクイチゴが無いかと気を付けていた。
 「ノイチゴって食べたことある?」
 「いや、無い。食べてみたい。」などと会話しながら、
 「あっ、あった。これがホウロクイチゴだ。」と、私は見つけた。ホウロクイチゴはあちらこちらにいくつもあったが、しかし、果実はなかなか見つからない。ごく小さいものをいくつか見ただけ。果実が熟す時期にはまだ少し早いのかもしれない。
 「あっ、そこ、赤いのがある。」28歳の美女が言う。
 「えっ、どこ?」と私が一歩足を踏み出したら、
 「あーっ、踏んだ。」となった。踏み出した足を上げると、そこに潰れた赤いものがあった。それが確かにホウロクイチゴの実だったかどうかは確かめようもなかったが、その後はもう探すのも諦めた。というわけで、私はまだホウロクイチゴの味を知らない。

 ホウロクイチゴ(焙烙苺):雑木
 バラ科の常緑低木 方言名:ウフイチュビ
 名前の由来は『沖縄植物野外観察図鑑』に「核果の中が空っぽで、逆さにすると、焙烙鍋の形に似ているから名づけられた」とあった。であるが、焙烙鍋の形が分からない。広辞苑を引く、焙烙鍋は無く、焙烙があり、「素焼きの平たい土鍋。火にかけて食品を炒ったり蒸し焼きにしたりするのに用いる」とのこと。
 野原や林縁に生えると文献にあり、私は春の伊是名島で初めて見て、その後は大宜味村でも粟国島でも見つけた。ヤンバル(山原:沖縄島北部の通称)の野原や林縁じゃないと見られないのか?と思っていたら西原の畑の傍にもあった。
 半蔓性で枝は周りのものに絡みつくようにして長く伸び、枝の地面に接した箇所から発根し、どんどん広がって増えていく。
 花は葉脇から出て白色。形はリュウキュウバライチゴの花にている。開花期についての資料は無いが、私の写真は3月、ということで、春としておく。
 果実は径1〜2センチほど。ノイチゴと呼ばれるものの一つで、赤く熟し食べられる。美味しいと文献にあったが、私はまだ食べたことが無い。

 花
 記:島乃ガジ丸 2012.8.27  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
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