ヒナギキョウ
 「ひな」を広辞苑で引くと「ひな」と読む漢字が2つ出てくる。雛は鳥の赤ちゃんの呼び名であり、雛祭りの「ひな」でもある。もう一つの鄙は「鄙びる」の「ひな」で、「都を離れた土地。いなか」(広辞苑)、及び「支配が及んでいない未開の地の住民」(〃)の意がある。同じ発音でも両者のイメージは開きが大きい。南の島で一人静かに質素に暮している私はもちろん、鄙に愛着がある。雛にはあまり縁が無い。
 
 雛にはもう一つ、「小さい、愛らしい意を表す語」(広辞苑)ともある。今回紹介するヒナギキョウのヒナはその意。「小さい、愛らしい」植物はいくらもあるが、ヒナと名のつく植物は、私がこれまで紹介した中には一つも無い。やはり雛には縁が無い。
 雛は無いが同じような意味で姫と名のつく植物はいくつもある。例えば、ヒメキランソウ、ヒメサザンカ、ヒメジョオン、ヒメムカシヨモギ、ヒメユリなどなど。雛にはあまり縁の無い私だが姫には多少縁があるようだ。生まれてからずっと男であり続けている私はもちろん、雛よりはずっと成長して女性らしさを備えた姫の方には愛着がある。

 ヒナギキョウ(雛桔梗):野草
 キキョウ科の多年草 関東地方〜南西諸島、東南アジア等に分布 方言名:ムシクサ
 広辞苑に雛桔梗と漢字があり、『沖縄植物野外観察図鑑』に「小型で可愛いキキョウの意」と名前の由来があった。キキョウは同じキキョウ科の多年草で「根は・・・乾して漢方生薬の桔梗(根)とし」(広辞苑)とあることから漢名だと思われる。
 高さは20〜40センチで、細長い柄を上に伸ばし、キキョウに似た青紫色の小さな花を咲かせる。開花期については広辞苑に「夏から秋にかけて」とあったが、私の写真は3月、文献の写真は5月、ということで、沖縄では春から夏としておく。
 日当たりのよい畑地、野原、山地の路傍などに生える。キキョウとは同科別属。

 花
 記:島乃ガジ丸 2012.10.18  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
inserted by FC2 system