ハイクサネム
 若い頃、「嘘つき」と恋人に言われることがたびたびあった。私自身、ホントにこの女が好きなのか、それとも、この女の体が好きなのかよく判らなかったので、たぶん、嘘もたくさんついていたのだと思う。女の鋭い勘は、そんな嘘を見抜いていたのだろう。
 オジサンという歳になってからは、「嘘つき」と恋人に言われたことはたったの一度も無い。恋人のいた時期がごく短かかったということもあるが、嘘をつくほどの情熱を失くしてしまったということもある。オジサンは、乾いている。
 フジテレビの「トリビアの泉」に「ガセビアの沼」というコーナーがある。緒川たまきが「嘘つき」と言って終わるコーナー。私はそれが大好きで、緒川たまきが出てくるとパソコン作業の手を休めて、テレビに目を向ける。「嘘つき」なんて、あんな風に言われたら幸せだろうなと思いつつ、遠く過ぎ去った青春時代を懐かしむのである。

 ある日、道端に黒い花を見つけた。「この世に黒い花は存在しない。黒い花を発明したらノーベル賞ものだ。」と昔、友人が言ったことを思い出す。それがホントのことかどうかは不明だが、「ノーベル賞もんだぜ」と私は少しワクワクしながら近付いて、見た。ところが、花と見えたものは莢であった。調べると、ハイクサネムという名の雑草。
 しかし、よく考えれば、園芸品種の発明がノーベル賞の対象になるとは思えない。たとえ黒い花が発明されたとしても、それが人類の幸福に貢献するほどの価値があるとは思えない。よって、少なくとも「ノーベル賞ものだ」はいい加減な話であろう。それはきっとガセである。緒川たまきに「嘘つき」と言われるのがオチである。

 ハイクサネム(這草合歓):野草
 マメ科の多年生草本 北アメリカ原産 方言名:なし
 ネムノキとは同じマメ科ではあるが別属。でも、見た目が似ているらしいのでネムと名がつく。ネムノキが木本性であることに対し、本種が草本性だからということでクサが付き、さらに、匍匐する性質があることからハイと付いて、ハイクサネムとなる。
 帰化植物だが、今では道端や野原で普通に見られる。海岸端の空き地にも多い。丈は低いが、茎が匍匐して横に広がる。花茎の先に集まった莢が、熟すると黒くなって目立つ。遠めに見ると、まるで黒い花のように見える。葉は二重の羽状複葉。
 記:島乃ガジ丸 2006.2.1  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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