ワラビ
 今ではスーパーに行けば見られるが、ワラビの煮物や漬物、蕨餅も私が子供の頃の沖縄には無かったと思う。さらに、それらの沖縄産があるとも聞いたことが無かった。ということで、沖縄には植物のワラビそのものが無いのであろうと思っていた。
 10年ほど前、ヤンバル(山原:沖縄島中北部の通称)の玉辻山へ出かけた。ある団体のツアーで、ヤンバルの森のガイド付きであった。ツアーは総勢30名ほどいて、山道は幅が狭く、2、3人がやっと並んで歩けるところがほとんどであった。団体の中に知り合いのいなかった私は、自然と、常にガイドの傍を歩いていた。
 その頃はガジ丸HPを始める数年前で、沖縄の自然に特に興味があったわけでもなかった。むしろ、そのツアーに参加してから沖縄の自然、動植物に興味を持ち始めたと言っても良い。日記を見ると、それ以降、末吉公園などへ週末散歩に出かけている。

 そのツアーで、今でも覚えているものがある。動物のシリケンイモリ、植物のコモウセンゴケとワラビ。シリケンイモリは沼にウジャウジャといたから。コモウセンゴケは花の咲くコケだということから、ワラビは、「あっ、沖縄にもワラビがあったんだ。」という私自身の驚きから。日本酒の好きな私は、東京に住んでいる頃、ワラビやゼンマイの煮物は好んで食べていた。「沖縄のも食えるんですか?」とガイドに訊いた。「食えます。春に芽が出ます、それを採りに来たらいいです。」との答え。車で片道2時間もかけて採って、料理して食うほど私はワラビが好きか?と自身に問う。首を横に振る。

 ワラビ(蕨):山菜・澱粉原料
 コバノイシカグマ科のシダ 世界の温帯に分布 方言名:ワラビ
 名前の由来については資料が無く、不明。
 名前の由来は不明だが、ワラビという名はよく知られ、倭国では食物としてもよく知られている。「倭国では」というのは、沖縄では馴染みが薄いのである。私は東京で暮らすようになってから知った。ワラビの煮物も蕨餅もそれまでは全く知らなかった。ワラビという言葉はよく耳にしていたが、それは子供(童)のことを沖縄では指す。
 高さはそう高くは無いが、葉の長さが1〜2mと、シダ類の中では比較的大きな葉をしている。山地の日当たりの良い場所に自生する。
 春に地中の根茎から蚊取り線香のようにくるくる巻いた新芽が出、それを食用とする。あく抜きしてお浸し、煮物、漬物などに用いる。また、根からはでんぷんが採れ、わらび餅の原料や、糊としても利用される。茎は籠などの細工物に利用される。

 葉裏
 記:島乃ガジ丸 2010.10.4  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
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