ウスベニアオイ
 私の住まいであるアパートは2階建てで、1階に2世帯ずつ計4世帯となっている。私の真下の部屋は今、30代くらいの男性が住んでいるが、一昨年までは若いシングルマザーが住んでいた。Kさんという可愛い女性であった。
 アパートの庭の一部は畑になっており、大家と各世帯の分として1区画約1坪の5区画に分けられ、今はその内の4区画を私が使っているが、以前はKさんも1区画を使っていた。Kさんの部屋の前は庭があって、そこの大部分、2坪ほどもKさんは畑にして作物を作っていた。可愛い女性なので仲良くできたらいいなぁと思っていた私は、野菜作りという共通の趣味をきっかけに、すぐに話しかけ、まあまあ仲良くなった。
 Kさんは二児の母親であり、働く人であり、とても忙しかったと思うのだが、畑仕事も熱心であった。彼女の管理する畑は私が管理する畑より雑草が少なく、作物の種類も量も多くあった。Kさんはまた、好奇心も旺盛で、あまり一般的ではない作物もいろいろ植えていた。白いゴーヤー、紫のジャガイモなどは、Kさんの畑で初めて見た。

 Kさんの畑には花もいろいろ咲いていた。「さすが女、ダンゴだけでなく花にも関心があるわけだ。」と思って、ある日、私の知らない花があったので訊いた。
 「そこの紫の花、あまり見ないけど、何て言うんですか?」
 「それ、コモンマロウです。ハーブなんですよ、花をお茶にします。きれいな青色のお茶になるんですよ。」との答え。「あー、そうなんですか。」と私は返事しながら、「働いて、子育てをし、休みの日には畑仕事をし、なおかつ、ハーブを育てハーブティーを楽しむ時間も持つとは見上げた女」と私は思った。

 ウスベニアオイ(薄紅葵):ハーブ
 アオイ科の多年草 北欧、北アフリカ、西南アジア原産 方言名:なし
 アパートの住人であったKさんが所有していて、コモンマロウという名前であることも彼女に教えて貰った。調べると、コモンマロウはCommon Mallowと書いて英名。和名のウスベニアオイは『花合わせ実用図鑑』にあったが、これも別名として記されており、一般的には、つまり流通名としてはコモンマロウで通っているのであろう。
 英名コモンマロウ(Common Mallow)、英語は得意ではないが、Commonが「普通の」という意味であることは知っている。では、普通のマロウとは何か?と思って、マロウを調べると、Mallowはゼニアオイ(銭葵)とあった。ゼニアオイは「アオイ科の一年草。ヨーロッパ原産・・・5〜6月頃紅紫色の花を開く」(広辞苑)とのこと。英語圏では、ゼニアオイよりもコモンマロウの方がよく見かけるゼニアオイの仲間だったのかもしれない。
 草丈は30〜60センチになる。寒さにも強い丈夫な植物。繁殖力も旺盛で、種が勝手に飛び出てナンクルミー(自然発生)するらしい。ハーブとして利用され、花をお茶に利用するとのこと。花色は桃、白、紫など、開花期は6月から9月。

 花
 記:島乃ガジ丸 2011.1.11  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『たのしいハーブ作り』株式会社主婦の友社発行
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