ツルムラサキ
 近所のオバサンたちと私は時々話をする。一ヶ月ほど前、向かいのAさんに声を掛けられた。「アロエの花の写真を撮りたいんだけど、いい?」と訊く。もちろん、断る理由は何も無い。Aさんがわざわざ私に承諾を請うたのは、「畑の中に三脚を立てたい」からであった。「え?それじゃ逆光になるでしょう?」と、カメラに関しては素人の私は不思議に思って訊く。「逆光の方が、花の色が輝いてきれいなのよ」と教えてくれた。
 先日、その撮った写真を見せてもらった。確かにきれいな写真だった。「これはいい」と数日後、私も真似て、同じアングルから逆光の写真を撮った。写真素人の私には、同じような写真は撮れなかった。Aさんのとは雲泥の差があった。何故だか不明。
 Aさんには、金城ダムにカワセミがいるということも教えてもらい、その写真の撮り方も教わった。植物動物を写真入りで紹介している私が、じつは、得意としなければならないことまでも、私は近所のオバサンたちからいろいろと教わっている。

 新聞配達のオバサンもよく声を掛けてくれる。先日、私が畑仕事をしていると、「この葉っぱ貰っていい?」と訊く。畑のフェンスからクロトンの木に絡まっているナンクルミー(自然発生)した蔓性植物の葉っぱ。ただの雑草だと思っていた私は、「え、いいですよ。」と答え、「それ、食えるの?」と訊き返した。「ツルムラサキよ」と答える。ツルムラサキなら私も知っている。「ツルムラサキって、紫色をしているんじゃなかったですか?」とさらに訊くと、「こういうのもあるのよ。こっちの方が美味しいのよ」と言う。経験から得られた確かな知識である。それを私は教わる。ありがたいことである。

 ツルムラサキ(蔓紫):生垣・野菜
 ツルムラサキ科の蔓性多年生草本 熱帯アジア原産 方言名:ジュビン
 茎が紫色をした蔓植物なのでツルムラサキという名。空地や畑などに雑草のように生えてくる蔓植物であるが、古くから野菜として、または生垣として利用されている。
 多年生草本と書いたが、温帯の日本では二年生草本となる。元々が熱帯産の多年生植物であり、沖縄は亜熱帯なので、多年生の性質がそのまま残るというわけである。
 野菜としては、そう多くは生産されていないようである。スーパーに並んでいるのを私は見たことが無い。種がどこからともなく(たぶん鳥の糞に混じって)やってきて、どこにでも勝手に生えてくるので、わざわざ買うほどのものでは無いのかもしれない。しかしながら、ビタミン、ミネラル分を多く含む健康野菜で、かつ、肉厚の葉はジューシーで美味しいらしい。私は、食べたことがあるかもしれないが、その味を覚えていない。
 性質が強く、沖縄の夏の暑さにも負けないので、一年中収穫できる。また、害虫被害も無いので無農薬栽培ができる。品種はいろいろあって、茎が紫色なのと、緑色のものとに大別される。緑色系の方が多いとのこと。私の畑に自然発生しているのも緑色系。
 葉脇に可愛らしい白い小さな花を穂状に付け、次々と咲く。早い花から順次実となり、熟すと照りのある濃紫色となる。花と実が一緒についていることが多いので目立つ。

 自然発生のツルムラサキ
 記:島乃ガジ丸 2006.4.23  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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