スベリヒユ
 『ツルナ』の頁で紹介した小冊子、ダンパチヤー(散髪屋)のオヤジSさんが、「あれはいいよね。相当役に立っているよ」と言った『沖縄の薬草・野草』を、その後、私も家に帰って開いた。それを参考にして『ツルナ』を書いた。そのついでに『オオバコ』も書いた。そして、さらにまたページをめくる。
 そう頻繁には見ないが、名前は良く知っているスベリヒユが、小冊子の、終わりから数えて3ページ目にあった。アパートの畑のうち、1階のKさんが担当している1区画にスベリヒユがあって、今、花を咲かせている。Kさんに確認はしていないが、ナンクルミー(自然発生)したようでは無く、わざわざ植えているみたいである。
 Kさんは、私より頻繁に畑の雑草取りをしている。よってKさんの畑には、雑草はごく少ない。それなのに、その一角にスベリヒユが蔓延っている。わざわざ植えたもので無かったとしても、少なくともKさんは、スベリヒユを雑草として認識はしてないわけだ。

 『沖縄の薬草・野草』によれば、その薬効は「そばかす、脚気、虫刺され、他」などとある。今時、脚気は無かろう。Kさんは三児の母であるが、まだ若い。若いけれどもそばかすは無い。虫刺されは、虫除けスプレーを使っているみたいなので、あまり必要としない。であれば、彼女はスベリヒユを野菜として食うに違いない。同じく『沖縄の薬草・野草』に、スベリヒユの酢味噌和えと白和えが紹介されてある。そういうのを彼女が作るのであれば、ちょっと味見させてくれないだろうかと、オジサンは思うのである。そのついでに、オジサンと仲良くしてくれないかなぁ、ともまた、思うのである。

 スベリヒユ(滑莧):野草・食用・薬用
 スベリヒユ科の一年生草本 トカラ列島以南に分布 方言名:ニンブトゥカー
 茎や葉の表面に艶があって滑らかにみえるところからスベリとつく。ヒユはヒユ科の植物で、高さ1mほどになり、地を這うようにして広がる本種とは全体の形が大きく違い、花も葉も似ていないのだが、ヒユとつく。何故かは不明。
 畑や空き地の陽当りの良い場所に勝手に生えてくる。葉は肉厚で照りがあり、多肉植物のようにも見える。その葉と、そして茎が食用となる。味噌和えにするとのこと。乾燥させて煎じて服用すれば、膀胱炎などに効果のある薬草でもある。
 春から夏にかけて、多く分枝した茎の先に鮮黄色の花がつく。花もまあまあきれい。本種を基本種(Portulacea oleracea)とした園芸種に、花付きが多く、観賞用として用いられているハナスベリヒユ(学名:Portulacea oleracea.L.var.giganthes(L.f.)Bailey)があり、同属には有名なマツバボタン(Portulaca grandiflora Hook)がある。
 ついでに、ヒユ

 ヒユ(莧):野草・食用
 ヒユ科の一年生草本 インド原産 方言名:ヒーナ
 最近はあまり見ないが、日本でも野菜として古くから栽培されていたらしい。沖縄でも栽培の歴史は古いようだが、スーパーに並んでいるのを見たことが無い。ヒユ属の学名はアマランサス(Amaranthus)といい、その名はたまに聞く。東南アジアでは重要な野菜で、広く栽培されているとのことだが、品種によっては葉野菜であり、また、その種子が穀物となるとのこと。雑穀として健康食品にもなっているらしい。
 文献には「ヒユナ」という名で載っており、ホウレンソウと同じような使い方で、煮物や炒め物などにして食されるとあった。
 ヒユ属には観賞用のハゲイトウも含まれている。
 記:島乃ガジ丸 2006.4.19  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『沖縄の薬草・野草』沖縄タイムス販売店会県連合会企画・制作
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