ソクズ
 首里石嶺のアパートから宜野湾市我如古のアパートに引っ越して約八ヶ月になる。この間、3回ダンパチヤー(断髪屋、散髪屋のこと)に行っている。その3回ともそれまで行きつけだった首里石嶺の、アパートから徒歩2分とかからないダンパチヤー、親父も女将もアウトドアの遊びが好きなダンパチヤー、親父も女将も薬草好きなダンパチヤー。新居の近くに私好みの昔ながらのダンパチヤーが見つからないせいもあるが、親父や女将との話が楽しいせいもある。「ずっとこっちに来たらいいさぁ」とも言ってくれている。
 去年の7月、まだ石嶺に住んでいる頃、髪を切りに行った時、髪を切り終わって帰ろうとすると、「ちょっと待って、裏の庭に木があるんだが、腎臓に効く薬草らしいんだが、名前が判らない、調べてくれんか?方言ではハブギーと言うらしい。」と頼まれ、その植物の写真を撮って後日調べた。方言名が分かっているので調べはすぐにつくと思ったのだが、しかし、どの参考文献にも方言名ハブギーが無い。

 ハブギー、ハブはあの有名な毒蛇のことだろうか?その果実をネズミが好み、そのネズミを追ってハブが集まるからということでもあろうか?ギーはおそらくキ(木)の濁音化したものであろう。羽状複葉の葉も大きく、背丈も150センチほどもあり、見た目は灌木なので、それはたぶん間違い無い、・・・と思って調べるが、どの参考文献にもそれらしきものは見当たらない。で、名称判明は諦めていた。
 ところが、最近知り合った薬草研究家の爺様に感化されて、私も少し薬草を勉強しようと思い、先日、図書館から薬草の図鑑を借りた。それにハブギーとダンパチヤーの親父が言っていた植物があった。ハブギーは間違いで、ハブグサであった。ハブグサのグサは草のこと。そう、木本では無く草本だったのだ。木本と決めつけて調べていたので、なかなか見つからなかったわけである。ハブグサ、和名はソクズ。

 ソクズ(そくず):薬草
 スイカズラ科の多年草 本州以南〜南西諸島に分布 方言名:ハブグサ、ハブグサー
 別名をクサニワトコと言う。これは、木本であるニワトコに似た草本であるところから来ている。ニワトコ(庭常・接骨木)は同じスイカズラ科の落葉大低木で、古名をタズノキと言う。『植物名の由来』によるソクズの由来は、草タズノキがソウタズノキとなり、それが詰まってソクズになったのではないかとのこと。なお、ソクズの漢字は広辞苑にあったが、常用漢字ではないようで、パソコンの辞書にその文字は無い。
 茎は直立し、高さ100〜150センチほどになる大型の草本。人家近くの林縁に生えるとのことだが、薬草好きの散髪屋の夫婦の庭にあったもの以外では、私の近くでは他に見たことが無い、あるいは、見えていたかもしれないが、気付いていない。
 茎の先に大型の集散花序をつけ、小さな花を多く咲かせる。花色は白、開花期は7月から8月。果実は球形で橙赤色、甘味があってジャムなどに利用される。
 薬草としては葉や地下茎が利用される。便秘や利尿、関節痛や神経痛などに効くとのこと。関節痛や神経痛には葉や茎を煎じて服用するとのこと。
 薬草としてだけでは無く、若芽は茹でてお浸しにして美味しいとのこと。
 記:島乃ガジ丸 2012.4.19  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
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