シマトウガラシ
 沖縄ソバの専門店には必ず、普通の食堂で沖縄ソバのある店でも少なからず、コーレーグスと呼ばれる液体の薬味が置いてある。泡盛の中に生のシマトウガラシを漬け込んで、唐辛子の辛味成分を溶出させたものだ。ラーメンに七味唐辛子を入れるのと同じ感覚で用いる。七味唐辛子に比べるとコーレーグスの方がずっと辛い。
 泡盛に漬けたコーレーグスではなく、生のシマトウガラシをそのまま細かく刻んで、沖縄ソバやラーメンに入れても良い。2、3cmほどのものを1本使うが、種と、種の周りの軟らかい果肉のような部分は取り除く。そこが、強烈に辛いからだ。種の周りの軟らかい果肉のような部分は水分を多く含んでおり、取り除くときに指先に付く。付いた赤い液体は水で流したくらいでは完全には落ちない。それは、頬や鼻などに触れてもたいしたこと無いが、うっかりその指で目の付近を触れようものなら、七転八倒する羽目になる。

 ある日、生のシマトウガラシを刻んだあと、トイレに行った。左手の指先がうっかり亀の頭に触れてしまった。少し経って、亀の頭は七転八倒する羽目になった。どうやら、目の周りの皮膚と同じくらい、あるいはそれ以上に、亀の頭は敏感だったようだ。
 生のシマトウガラシは沖縄ソバやラーメンだけでなく、いろいろな料理に使える。スパゲッティーのペペロンチーノ、麻婆豆腐など元々唐辛子を使うものの他、チャンプルーにも煮物にも使う。私の畑のシマトウガラシは、今たくさんの実をつけているが、これらの三分の一は私一人で、たぶん消費する。残りは近所のオバサンたちが貰ってくれる。

 シマトウガラシ(島唐辛子):野菜
 ナス科の一年生草本。方言名:コーレーグス
 一年生草本と文献にはあったが、沖縄では多年生。私の畑のシマトウガラシは今年が三年目、収穫が終わったら剪定するが、暖かくなると枝葉を伸ばし、年々大きくなる。
 生のシマトウガラシを泡盛の中に漬け込んだ薬味のことを沖縄口(ウチナーグチ:沖縄言葉)でコーレーグスと言うが、シマトウガラシそのものもコーレーグスと言う。コーレーは高麗のこと。グスは薬のこと。高麗からきた薬という意味だろうか。朝鮮半島の唐辛子とは種類が違うと思うのだが、そんな細かいことはいいや、と思って詳細は不明。
 文献でトウガラシを調べたら、原産地は熱帯アメリカとある。辛いもの大好きという人は古今東西どこにでもたくさんいて、大航海時代、唐辛子はヨーロッパ、アフリカ、アジアと世界中を旅して、どこやらから沖縄まで流れ着いたのだろう。

 実
 記:2004.8.10 島乃ガジ丸  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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