シマダイコン
 沖縄の伝統料理には汁物が多い。シンジムン(煎じ物)という意味合いがあるのかもしれない。ソーキ汁、テビチ汁、イナムドゥチ、中味汁、山羊汁、牛汁、イカ墨汁、アバサー汁、ミーバイ汁などが有名どころとしてあるが、このうち、山羊汁、牛汁を除いたものを、私は自分でも作って食べている。山羊と牛は部屋が臭くなるので避けていている。
 イカ、アバサー(ハリセンボン)、ミーバイ(ハタ科の魚)は海のもので、値段が高いのと、これらもまた、多少臭さが気になるので、そう頻繁には作らない。
 ソーキ汁、テビチ汁、イナムドゥチ、中味汁はいずれも材料が豚。さすが豚肉料理の盛んな沖縄なので、新鮮な豚肉が安く手に入る。また、これらはそう臭くは無い。よって、これらのうちのどれか一つを、たぶん月に1回くらいは作っている。

 先週の土曜日(30日)にはソーキ汁を作った。ソーキ汁にはソーキ(豚の骨付きあばら肉)の他に、昆布、椎茸、ダイコン、ニンジン、厚揚げなどを具として用いるが、今回の私のソーキ汁には昆布、厚揚げ、タケノコを使った。タケノコは、不味いというわけではないが、旨くも無かった。少なくとも二度とソーキ汁には使わないであろう。
 冬場のソーキ汁には何といってもダイコンが最も合う。ダイコンと一緒に煮込むと、ソーキも旨くなるしダイコンも旨くなる。汁がまた、爽やかでこくのある旨い汁となる。ダイコンは、そのへんにありふれている青首ダイコンではなく、シマダイコンを使うと、よりいっそう旨い。冬場にしか手に入らないのが難点であるが、その分、季節を感じさせてくれる食物と言える。私もその季節には、必ず一度はシマダイコンを楽しんでいる。
 冬場のソーキ汁にはシマダイコンだが、夏場のソーキ汁にはシブイ(トウガン)を合わせる。これがまた旨い。シブイについてはまた、その季節に述べましょう。

 シマダイコン(島大根):野菜
 アブラナ科の一、二年草。原産分布は中央アジア、地中海沿岸地方。方言名:デークニ
 ダイコンは歴史が古く、日本では奈良時代から、沖縄でも1700年くらいから栽培されていたと文献にある。歴史の長さは、その土地土地の環境に合った、その土地土地独特のダイコンが作られてくるのに十分の時間があったということになる。
 現在では、おそらく、どこの県でも青首ダイコンが主流であろうが、鹿児島には桜島大根という独特の形をしたダイコンが特産品としてある。他府県同様にこの沖縄でも青首ダイコンが主流なのであるが、古くから沖縄で栽培されてきたこのシマダイコンも今だ人気がある。生でもいいが、煮物にして美味しい。形は桜島大根のように丸っこい。が、桜島大根ほど大きくはならない。旬は冬。今年も私はその旬を楽しんだ。
 ダイコンはスズシロという別称もあり、春の七草の一つに数えられている。

 収穫
 記:島乃ガジ丸 2005.5.3  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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