セリ
 私の母は料理上手で、沖縄料理は当然のこと、和食も洋食も時々食卓に出した。
 私が子供の頃はまだ復帰前で、通貨は米ドル、車は左ハンドルの左側通行の時代。ステーキ、ハンバーグ、シチューなどの洋食はアメリカ文化の影響。
 和食については、母は戦争の頃、熊本へ疎開し、ある一家に引き取られ、そこで花嫁修業をしたらしい。そんなわけで、ワラビ、ゼンマイなどの山菜、その他の沖縄料理には無い食材を使っての料理があり、年越しソバは沖縄ソバでは無く、鍋焼きうどんと決まっており、沖縄の伝統には無いお雑煮も作り、それは白味噌仕立てであった。
 あさり汁の薬味、親戚の家では青ネギの刻んだものが普通であったが、母の作るあさり汁(澄ましの場合も味噌仕立ての場合も)の薬味はミツバであった。大学生活で東京暮らしをするようになって、貝の汁にはミツバが多いということを知った。母の料理が和風のものも多かったのだということをその時に再確認した。

 ミツバはミチバと方言名もあることから昔から沖縄にもあり、料理にも使われたと思われるが、同じセリ科で似たような香りがし、似たような料理に使われるセリを、私は子供の頃に食べた記憶が無い。学生の頃知らずに食ったことはあるかもしれないが、大人になってからもセリを食べた記憶が無い。セリの料理を私は知らない。
 セリにもシーリーバーと方言名があるので、また、薬草としての効能が書かれた文献もあるので昔から沖縄にあったと思われるが、母の作る料理にあったかどうか記憶に無い。というわけで、私はまだ、それと知ってセリを食べたことが無い。今日この後、スーパーに寄って、買って食うことにしよう。お浸しにでもしよう。酒の肴になりそう。

 セリ(芹・芹子・水芹):葉菜
 セリ科の多年草 日本原産 方言名:シーリーバー
 名前の由来は『沖縄植物野外活用図鑑』に「葉が競り合って出る様子から」とあった。芹、芹子、水芹は広辞苑にあり、日本原産ということから芹は漢字では無く国字のようである。方言名のシーリーバーはセリハ(芹葉)の沖縄読み。
 湿地を好み、そういった環境の田の畦などに自生する。また、食用として水田で栽培もされる。若葉は良い香りがし、その香りを楽しむためには主に生で、ネギのように薬味として使うと良いとあった。春の七草の一つ。旬は冬。春の七草は正月七日の冬。
 枝は匍匐して広がり、枝の先は斜上して高さ30センチほどになる。枝先から花茎を伸ばし、その先に白い小花を多数つける。開花期は夏。葉は2回羽状複葉。

 花
 記:島乃ガジ丸 2013.4.10  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
 『ニッポンの野菜』丹野清志著、株式会社玄光社発行
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