リョウリバナナ
 300坪の畑なっぴばるを借りた時、既にそこにはいくつかの作物が植えられていた。前に借りていた友人の脱サラ農夫Kが植えたものだ。ニラ、ニンニク、甘藷、ニガナ、ウコン、バンシルー、アセロラ、パパイア、バナナなどがあった。
 Kが植えたバナナは彼によると「島バナナ」とのこと。果実は小さいが味が良く、人気のバナナで高い値段で売れるもの。貧乏の私にとっては換金作物のエースだ。ところが今年は長く続いた干ばつで実着きが悪かった。今のところ1房しかない。
 なっぴばるの東隣の畑はなっぴばるとの境界近くにたくさんの、ざっと数えて40〜50株のバナナが植えられている。植えられてはいるが収穫はされていない。持ち主が年取って畑仕事ができなくなって放っておかれているとのこと。
 隣のバナナはKによると「リョウリバナナ」とのこと。「料理ってことか?火を通して食うってことか?」と訊くと、「そう、東南アジアでは主食になっているらしい。青いうちに収穫して焼いたり揚げたりするようだ。イモのような味がする」とのこと。
 隣のバナナはいくつも、見える範囲でも今6房の実を着けている。その内3房はなっぴばるの敷地内に実を垂れ下げている。なっぴばるの敷地内に垂れ下がっていたものは他にも2房あり、それらは8月末〜9月に倒れ、既に私が収穫している。
     

 敷地内に落ちた果実はその敷地のものという法律が確かあったはず。よって、私は堂々と収穫したわけ。そして、さっそく料理してみた。Kの言う通りイモのような味、イモより水分が少々多めできめが細かいかもしれない。味は淡白、甘みも少ない。
 私は皮ごとオーブンで焼いて、蒸し器で蒸しての2通りの調理で食べたが、蒸した方が食べやすいと感じられた。次はソテーしてみようと思った。
     
     
 ソテーしようと思って2週間が過ぎて、「あっ!バナナ」と思い出して、バナナを入れてあった袋を開くと、リョウリバナナは黄色くなっていた。そういえばKが「熟したら普通のバナナと同じく甘くなるよ」と言っていたのを思い出して、で、食べてみた。普通のより甘みは少なく酸味が少々強かったが、確かに果物と言ってよい味であった。 
 文献に「甘みは少なくでんぷん質、ヤニ臭や渋みをもち生食できない」とあったが、それは未熟のものの場合で、完熟したものは普通に果実としていただける。
 
 リョウリバナナ(料理甘蕉)
 バショウ科の多年草 東南アジア原産 方言名:バサナイ
 名前の由来、資料はないがおよそで分かる。生食では無く料理して(火を通して)食べることからリョウリ(料理)であろう。甘蕉はバナナの漢字表記。
 別名にサンカクバナナとあるが、おそらく「果実は角ばり」からサンカク(三角)だと思われる。最初に見たリョウリバナナは三角では無く四角。文献の写真にタヒチ島のリョウリバナナがあり、それは「四角に角ばる」とあった。リョウリバナナにも品種があるようで、私の畑の隣の敷地にあるリョウリバナナには三角のも四角のもある。
 茎は太く大型で、花序は60〜150センチ。隣の畑のもの、いくつか実を着けているが、花序の長さはだいたい90センチ内外。6〜12段着いている。
 煮たり焼いたり天ぷらなどにして食す。干しバナナにもされる。皮は、手では剥きにくいのでナイフで剥く。青いものを皮を剥いて、すりおろして、それを丸めて油で揚げるという料理もある。熟すと黄色くなり、皮も手で簡単に剥ける。ただし、それは隣の畑のリョウリバナナに関して言えるもので、他の品種のリョウリバナナについては不明。
 ちなみに学名はMusa paradisiasa L.
 訂正追記:2016.11.10

 大きさ:立っている人は先輩農夫のNさん。身長155ほど。
 記:島乃ガジ丸 2013.10.5  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
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 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
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