パイナップル
 大学生の頃、3年生だったか4年生だったかの夏休みに、私が帰省するというと、数人の友人たちが沖縄へ遊びに行きたいと希望し、そして、やってきた。
 数人は、確か女子が3人、男子が1人で、この内、女子の1人と男子の1人は、教室などでほぼ毎日顔を合わせてはいたが、それほど親しくは無く、どういう人だったのかよく覚えていない。が、あとの女子2人は飲み仲間であり、遊び仲間であり、一緒にいる時間も多かったので、その顔も名前も、性格もよく覚えている。
 2人とも私と同じ日本文学科に所属し、私より1期下。私が1年のときに早々と留年したので、彼女たちと同じ教室にいることが多く、よって、親しくなったわけである。Uはいかにも文学少女で、知識も豊富で、感性も豊か、さすが日本文学科という女子。もう1人のHは、私と同じ何となく日本文学科といったタイプ。茶道を嗜み、女性らしさを持った人であったが、おっちょこちょいで、トンチンカンなことをたまに言う人であった。

 沖縄の夏、それも、青春真っ只中の若者たちであれば当然、海。で、みんなでビーチへ行く。浜辺にアダンの木があって、それに実がついていた。Hがそれを見て、言う。
 「あー、パイナップルってこんなふうに生っているんだ。」
パイナップルがどういうふうに生っているかをよく知っている私は、「また、トンチンカンなことを言う」と思ったのだが、良識ある、と思っていた他の3人も「あ!ホントだ。初めて見た。」などと次々に叫ぶ。そうであるか。内地(倭国のこと)にはパイナップルが無かったのであるか。だから、みんな知らないのであるか。と納得し、パイナップルは他府県にもあると思っていた私がトンチンカンであることも、認識したのである。

 パイナップル(Pineapple):果物
 パイナップル科の多年生草本 南アメリカ原産 方言名:パイン
 『沖縄園芸百科』ではアナナス科となっていて、私もアナナス科と覚えていたのだが、広辞苑にも『沖縄植物野外活用図鑑』にも『沖縄園芸植物大図鑑』にもパイナップル科とあった。アナナス科は旧称らしい。パイナップルはパイナップル科アナナス属となる。
 和名のパイナップルは英語名のPineappleから。Pineは松、appleはリンゴ、松ぽっくりのような形をしたリンゴのように美味しい果実ということ。方言名はパイン、フユーナムン(面倒臭がり屋)の多いウチナーンチュは長い名前を好まない。
 高さは1mくらいになる。品種によって、葉の縁に棘のあるもの無いもの、果実の大きさ形などにもいろいろある。果実は、約100個の花が集まってできた集合果と呼ばれるもの。甘酸っぱくジューシーで、いかにも南国の果物。花芽分化期は11月〜12月、3月〜6月と年2回あり、したがって収穫期も年2回、7月〜9月と10月から3月となっている。ハウス栽培などによって、現在ではほぼ年中出回っている。
 世界の熱帯、亜熱帯各地で栽培され、生食やジュース、缶詰などに利用される。酸性土壌を好むので、沖縄島では土壌が赤土である中北部に産地が多い。

 実
 記:島乃ガジ丸 2006.4.17  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
inserted by FC2 system