ニンニク
 子供の頃、吸血鬼ドラキュラの映画だかドラマだかを観て「怖い」と思った。ドラキュラがニンニクを嫌うことを知り、ニンニクは有難いものだと思った。特に滋養強壮を要しない子供ではあったが、私はニンニクが好きになった。
 大人になってからもニンニクは好きであり続けており、今でも好きである。滋養強壮を要する中年以降は、疲労回復のためにたびたびニンニクを食している。ただ、子作りのために食したことは一度も無い。残念ながらそのような機会は無かった。

 ニンニクは漢字で葫、または大蒜と表記する。であるが、ニンニクという音は忍辱という言葉から来ているらしい。忍辱は仏教用語で「もろもろの侮辱・迫害を忍受して恨まないこと」(広辞苑)とあった。まるで、ウチナーンチュのためにあるような言葉だ。
 「侮辱・迫害を忍受」などしたくは無いが、日本国やアメリカ合衆国を恨んではいけないのだ。ニコニコ笑いながらもしぶとく抵抗しつつ、こちらから友人として付き合っていけば、いつかは向こうもこちらを友人として扱ってくれるだろうと期待する。
 私がこの歳になるまで長い間、独り者で、子作りする機会を得なかったことも忍受して恨まないことにしている。それはもうしょうが無いのだ、そういう道を自ら選択し、歩んできたのだから。そういった運命ともニコニコ笑いながら付き合っていけば、独り身のままであっても、いつかは違う幸せがやって来るに違いないと期待している。

 私の畑にもニンニクは植えてある。沖縄では冬が収穫時だが、植え時期が畑を始めたばっかりの頃で、開墾するのに忙しく、植え方は大雑把であった。大雑把に植えたニンニクはやはり、成長が悪く、ごく小さい。30株ほど収穫したが、その重量はスーパーに良くある青森産ニンニクのだいたい2株分ほどしか無かった。

 ニンニク(葫・大蒜):根菜・葉菜
 ユリ科の多年草 西アジア原産といわれる 方言名:ヒル、フィル
 漢字の葫、及び大蒜は広辞苑にあった。葫は「つる草の名。ゆうがお。ひょうたん」とあり、また、「にんにく」(いずれも広辞苑)ともある。蒜は「ネギ・ニンニク・ノビルなどの総称」(同)であり、それに大がついて大蒜となるとニンニクのみを指す。
 荵蓐、忍辱という字も園芸雑誌などで見るが、ニンニクという音はそこから来ているものと思われる。ただ、その関連性については、私には不明。荵蓐は「しだ植物の名。しのぶ。しのぶぐさ」(同)で、忍辱は仏教用語で「もろもろの侮辱・迫害を忍受して恨まないこと」(同)とあった。「強い心」が強壮薬となるニンニクと繋がるのかも。
 中央から花茎を真っ直ぐ伸ばし球状花序をつける。花色は白、開花期、沖縄では春。花は咲くが結実はしないとのこと。繁殖はりん片や株芽で行う。
 球根を主に食用とし、沖縄では9月中旬から下旬に植付け、2月から4月に収穫。生葉利用栽培というのもあり、ニンニクの葉を食用とするということだが、その場合は8月から10月に植付け、11月から2月に収穫する。ニンニク芽(花茎)も食用。
 品種によって異なるが、沖縄で栽培されるシマニンニク(農試1号、2号、3号)は、1球46グラム前後、りん片数は13〜14個とのこと。
 ちなみに、ヒル(蒜)の仲間の学名、
 ニンニク Allium sativum L.
 ニラ Allium tuberosum Rottl.
 タマネギ Allium cepa L.
 ネギ Allium fistulosum L.
 ワケギ Allium fistulosum L.var. caespitosum Makino
 ラッキョウ Allium chinensis G.Don

 花

 収穫
 記:島乃ガジ丸 2013.5.12  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
 『ニッポンの野菜』丹野清志著、株式会社玄光社発行
 『藤田智の野菜づくり大全』藤田智監修、NHK出版編
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