モーウイ
 過日、近所のハルサー大先輩N爺様が「どんなもの植えている?」となっぴばるを視察に来た。「ラッカセイ、宮古島小豆、シマラッキョウ、エダマメ・・・」などと畑の中を歩きながら爺様に答えていった。そして、「こっちはモーウイ」と言った時、
 「それはモーウイじゃないよ」と爺様が笑った。
 「でも、園芸店からモーウイと名の付いている苗を買ったんですよ」
 「それは店が間違っている。最近はどこでもそう間違っているな」

 そういえば、と思い出した。私が参考にしている文献の写真と、これまで私が作ってきたモーウイ、そして、スーパーの野菜売り場に並んでいるモーウイとは見た目が違う。文献のモーウイは淡い緑色をしているが、最近のモーウイは赤っぽい。
 そういえば、とまた思いだした。スーパーの野菜売り場に並んでいるモーウイ(これまでその名であった)の中には赤毛瓜とか赤モーウイと表記されているものもある。
 参考にしている文献はもう30年ほど前の発行である。その頃、N爺様が育てていたモーウイは文献の淡い緑色のものと一緒で、それがモーウイと沖縄で呼ぶものであったのだろう。今の赤いモーウイは後年やってきたということに違いない。なので、それをよく知っている担当者がいるスーパーでは赤毛瓜と表記しているのだろう。

 モーウイ(毛瓜):果菜
 ウリ科の一年生果菜 インド原産とされている 方言名:モーウイ
 名前の由来、と言ってもモーウイは方言名だが、ウイは瓜の沖縄読みでその通り瓜の仲間。果実に毛が生えているわけではないので、モー(毛)は髪の毛の毛、陰毛の毛では無いと思われる。沖縄語で言う毛は、髪の毛の毛の意味もあるが「野原、原っぱ」という意味もある。よって、モーウイは野原の瓜ということになるが、確信は無い。
 モーウイが和名の何を指しているかについても確信が無い。私が参考にしている古い文献には「シロウリ、方言名モーウイ」となっているが、最近スーパーや八百屋に並んでいるモーウイはアカウリ(赤瓜)、またはアカモーウイ(赤毛瓜)となっている。
 古い文献と87歳の爺様の言うことが正しいとすると、モーウイはシロウリで、マクワウリの変種とのこと。別名をアサウリ、またはツケウリとも言う。
 シロウリの果実は淡い緑色をしており、円筒形で表面は滑らか、果肉は白い。倭国では古くから味噌漬や奈良漬(酒粕漬け)に用いられている。アカウリの果実は同じく円筒形で果肉は白いが、表面は滑らかで無く、ザラザラしている。色は赤っぽい。
 学名を見るとモーウイはメロンの変種となっている。マクワウリもメロンの変種で、シロウリもアカウリも同様。マクワウリは知らないが、モーウイはメロンの変種らしくその果実は確かに良い香りがする。さほど甘くは無いが水分は多い。ちなみに学名、
 メロン Cucumis melo L.
 シロウリとアカウリ Cucumis melo var. conoman
 マクワウリ Cucumis melo var. makuwa

 花

 赤毛瓜
 記:島乃ガジ丸 2013.4.7  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
 『ニッポンの野菜』丹野清志著、株式会社玄光社発行
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