メボウキ
 金曜日の職場の近くに従姉の別荘がある。ヤンバルの山中、あるいはどこぞの海辺とかに別荘があるのなら解るが、そこは宜野湾市の住宅街にあり、自宅である首里のマンションから車で30分ほどの距離しかない。何の目的の別荘なのか、私には今もって不可解なのである。自宅と別荘との間を、従姉とその亭主の二人は週に何度も行き来している。
 別荘にはちょっとした畑(私の畑の10倍くらいの広さ)がある。ときおり何やらを植えたりはしているが、あまり熱心にやっている風には見えない。年間を通じての収穫量は、十分の一しかない私の畑とどっこいどっこいなのではないだろうか。
 その別荘ができた頃、たまたま従姉の亭主が転勤となって、夫婦揃って沖縄を離れた。で、私が別荘の管理をすることになった。週末に出かけ、部屋の換気、庭木への水遣りなどをやる。その代わり、別荘を自由に使わせてもらった。

 そんなある日、友人のKの娘がまだ小学生だった頃、彼ら一家、Kと彼の女房と娘と息子の4人、それに私の他の友人の何人かを呼んでパーティーをやった。
 Kの女房が料理するというので、「畑にバジルがあるけど何かに使う?」と私が訊いたら、女房では無く、娘の方が答えた。
 「バジリコスパゲティーにしよう。私大好き!」と。
 十歳かそこらでバジリコスパゲティーとは生意気な、と私は思ったのだが、彼女が手伝い、彼女の母親が作ってくれた生のバジルを使ったバジリコスパゲティーはすごく美味しかった。なるほどこれなら、十歳の小娘がその名を覚えてしまうであろうと納得した。

 メボウキ(目箒):野菜・香辛料
 シソ科の一年生草本 熱帯地方に広く分布する 方言名:なし
 メボウキでは知らない人も多いかもしれない。私も知らなかった。メボウキは和名で、バジルのことを指す。種子が目薬になるので目箒というらしい。目を掃除してくれるということ。かすみ目に効くとある。バジルはbasilと書き、元はギリシャ語とのこと。イタリア料理でよく用いられるが、イタリア語ではバジリコ(basilico)という。
 葉は食用、生のままでサラダに用いる。サラダといっても、バジルは香りも味も強いので、バジルだけをサラダにして食うのはきつい。他の野菜に添えるようにして使う。バジリコスパゲッティーにも生の葉が使える。葉を乾燥させた香辛料としても有名。
 小さく輪生する花は白から淡い紅色。目薬になるのは黒くなる果実。

 花

 追記(2005.10.7):先日、畑からバジルをたくさん収穫して、バジリコスパゲッティーを作った。Kの女房が作ったものと比べるとイマイチの出来。
     
 記:島乃ガジ丸 2005.8.27  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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