キャッサバ
 久々の食中毒で思い出したが、子供の頃ワタヤミー(腹痛みのこと)した時に、母が作ってくれた食い物があった。片栗粉(に限らず澱粉の粉)に砂糖を混ぜて、お湯で溶いたもの。葛湯みたいなものである。
 さて、その名前を何と言ったか思い出せない。さっき、従姉の亭主が来たので、彼に訊いてみたが、彼もまた思い出せなかった。ただ、片栗粉と言う私に彼は、「片栗粉では無かったと思うが、タピオカを使ったことは覚えている」と答えた。
 タピオカ、これはそのままウチナーグチ(沖縄口)になっているくらい、古くから沖縄の食生活にあったようである。タピオカはキャッサバの塊根から採れる澱粉。
 ちなみに、葛湯とは「葛粉に砂糖をまぜ、熱湯を注いでかきまぜた食物」(広辞苑)のことで、片栗粉とは「カタクリの地下茎から製した白色の澱粉」(同)のこと。ただし、片栗粉の名で現在市販されているものの多くは、ジャガイモの澱粉とのこと。
 「おもゆと言ったのではなかったっけ」と私が訊くと、「おもゆとは違うと思う」と従姉の亭主が言うので、これも調べてみた。
 重湯とは「水の量を多くして米を炊いた上澄みの糊状の汁」(広辞苑)であった。

 キャッサバ(cassava):鉢物・野菜
 トウダイグサ科の常緑低木 原産分布はブラジル、中南米 方言名:キーウム
 キャッサバという名前の由来は文献に無く、不明。原産地の言葉かもしれない。学名の属名はManihotと言い、和名の別称としてマニホットとある。
 方言名のキーウムは木の芋という意味。ただ、『沖縄植物野外活用図鑑』は方言名をタピオカとしてあった。タピオカはtapiocaと書き、たぶん英語。地下に大きな塊根ができ、それから採れる澱粉をタピオカという。沖縄では古くから馴染みのある食べ物で、澱粉も塊根もその親であるキャッサバも共にタピオカと呼ぶこともあったのであろう。
 高さは3mほどに留まり、細い葉は涼しげな感じを受ける。で、観葉植物としても利用されるのであるが、しかし何といっても、タピオカ澱粉は大事な食料。サツマイモと並んで、熱帯地方の重要な主食の一つとなっている。そのまま煮て、食える。

 塊根
 記:島乃ガジ丸 2006.1.2  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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