クミスクチン
 鹿児島の友人Nの女房は医者の娘で、何不自由無く育ち、なおかつ美人だった(過去形なのは、長いこと会っていないので、今もそうなのか不明なので)。気分もすっきりした人で、すぐに仲良くなれた。彼女はもう忘れてしまっているだろうが、初対面の日にあだ名を頂戴した。そのあだ名は、貰った本人も「ムフッ」とする楽しいもので、ユーモアのセンスもある人だった。
 数ヶ月前、Nが沖縄に来た時に、「最近、女房は健康に気を使っている」という話があった。「そうか、やはり寄る年波には勝てぬか」と私は思い、彼女にプレゼントを贈ることにした。

 友人のKが勤めている薬草の会社へ行き、話を聞きながら商品を選ぶ。先ずは、寄る年波に勝つための疲労回復に効き目のある「もろみ酢」を1本。沖縄産のもろみ酢は黒麹菌がどーたらこーたらで、他のものより有難みが大きいとのこと。次に、その薬草会社が独自に開発した、多種類の薬草のブレンド茶。友人Kの強いお勧めだったので1箱。そして、健康に気を使っているNの女房は、実は美容のほうにより多くの気を使っているだろうと慮って、「クミスクチン」のお茶を選ぶ。クミスクチンは美肌効果が期待できるらしい。すっぴん美人というわけだ。

 クミスクチン:薬用植物
 シソ科の多年草。分布は東南アジア、オーストラリア。方言名:クミスクチン
 方言名にクミスクチンと書いたが、沖縄口(沖縄語)はエ段、オ段がイ段、ウ段に転じるので、たとえば、米はクミ、底はスク、天はティンとなる。で、クミスクチンはいかにも沖縄口だったので、独断で方言名とした。が、実際は、「猫のヒゲ」を意味するマレー語らしい。
 花はきれい。サギソウを髣髴とさせる。白色、あるいは薄紫色の唇形、数本のおしべが長く突き出しているのが猫のヒゲに見立てられている。
 テレビ番組で紹介されて以来、沖縄の新しい健康食品として人気となっているらしいが、沖縄では薬草として昔からよく知られていた。私が知ったのは15年ほど前のこと。自然農法をやっている友人の畑を見学に行った時、畑の隅っこで可憐な花を咲かせていた。

 花
 記:2004.10.6 島乃ガジ丸  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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