カワラヨモギ
 ヨモギは漢字で艾の他、蓬とも書く。蓬は「ほお」けるとも読む。ほおけるは「老衰などのために、知覚がにぶくなる。もうろくする。」(広辞苑)のこと。何故、ヨモギに蓬の字が充てられているかは不明。ヨモギを食うと知覚がにぶくなるなんてことは無いと思う。ヨモギは、沖縄では薬草であり野菜であり、体に良いものとされている。
 ちなみに「惚ける」も「ほうける」と読み、「知覚がにぶくなる。ぼんやりする。ぼける」(広辞苑)で、蓬けるとほぼ同じ意味。ただ、私の感覚では少し違う。「蓬ける」は自然な、年寄りならばしょうがないといった「知覚がにぶくなる」感じだが、「惚ける」はボーっとして「知覚がにぶくなる」ような感じ。恋の病に罹った時のように。

 カワラヨモギは、野菜としてスーパーなどで売られているのを見たことは無いが、沖縄では古くから薬草として利用してきたようである。実験して試したわけでは無いが、カワラヨモギを食べても「蓬ける」ことはないはず。文献にもそんなこと書いていない。

 カワラヨモギ(河原艾):野草・薬草
 キク科の多年草 本州以南〜南西諸島に分布 方言名:ハママーチ、ヌーバン
 名前の由来、ヨモギについては『植物名の由来』に語源は不明としながら、著者の中村氏は「よく萌えでる草、つまり善萌草(よもぎ)ではないかと思う」とあった。その通りヨモギは繁殖力が強い。同書にはまた、「ヨモギに蓬の字をあてるのは誤り」とあり、ヨモギと蓬莱山(仙人が住むという山)とは無関係とのこと。カワラについては、広辞苑に河原艾と漢字表記があり、「河原・海浜に自生」することからついたと思われる。方言名のハママーチは浜に自生する松という意、葉が松に似ている。
 茎は直立し高さ30〜100センチ。河原・海浜に自生し、沖縄では海岸の砂浜に多く見られる。茎の下部は木質化する。分枝が多く横に広がる。
 葉は2回羽状複葉。根生葉は有柄で灰色がかって見える。茎葉の裂片は糸状となる。茎の先から円錐花序を出し、小さな管状花を多数つける。色は淡紫。開花期については、倭国では夏から秋のようだが、沖縄では春から夏となっている。 
 リュウキュウヨモギとは同種同属でよく似るが、本種の方が大型で、花は小さい。リュウキュウヨモギは匍匐性だが、本種は直立する。
 薬草としてはリュウキュウヨモギと同じ扱いで、花穂を乾燥させたものを煎じて服用する。解熱、咳止め、肝炎などの薬効があり、重要薬草とのこと。
 ちなみに学名は、
 カワラヨモギ Artemisia capillaris T.
 リュウキュウヨモギ Artemisia campestris L.
 ヨモギ Artemisia indica var. maximowiczii
 ニシヨモギ(フーチバー) Artemisia indica Willd. var. orientalis

 葉
 訂正追記:2018.8.26
 記:島乃ガジ丸 2012.5.17  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
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 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
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 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
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 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
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 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
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 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
 『ニッポンの野菜』丹野清志著、株式会社玄光社発行
 『藤田智の野菜づくり大全』藤田智監修、NHK出版編
 『やんばる樹木観察図鑑』與那原正勝著、ぱる3企画発行
 『熱帯の果実』小島裕著、新星図書出版発行
 『熱帯花木と観葉植物図鑑』(社)日本インドアグリーン協会編、株式会社誠久堂発行
 『ハーブを楽しむ本』川口昌栄編集、株式会社集英社発行
 『つる植物』沖縄都市環境研究会著 (有)沖縄出版発行
 『熱帯アジアの花』ウィリアム・ウォーレン著、チャールズ・イー・タトル出版発行 
 『沖縄の薬草百科』多和田真淳・大田文子著、那覇出版社発行
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