カンショ
 多くの男と同じく私も、焼き芋を好んでは食べない。たまに食うと美味しいとは思うが、私の好きな食物のランクでは、焼き芋はおそらく1000番目くらいになるだろう。だから、特別、焼き芋が食いたいなどと思うことは無い。
 ダイオキシンが話題になって、家の庭で落ち葉焚きがやりにくくなる以前は、アパートの庭の枯れ枝、落ち葉などを畑で燃やし、その灰を畑の土に混ぜるなどということをやっていた。その時の焚き火のエネルギーを何かに利用しないのはもったいないと思い、たいていは焼き芋を作っていた。近くの友人を呼んで、振舞ったりもしていた。そうやって焼き芋を食うことはあったが、そういう時でもむしろ、友人たちと飲むその後の酒の方がより楽しみであった。
 芋は、沖縄ではあまり焼き芋では食さない。たいていはふかし芋、あるいはゆで芋。または天ぷらにすることが多い。何故だろうと今、従姉に尋ねたら、沖縄の芋は、その種類が焼き芋には向かないのではないかという答え。確かに有名な読谷村の紅芋でさえ、焼いても、石焼き芋屋のあの黄色い芋に比べ、甘さはぐんと落ちる。

 芋の甘さが少ないということは、実は、沖縄の食生活の上で重要だったのではないかと思われる。金時芋のように甘さが強いと主食には向かないのだ。沖縄の昔(といってもそう遠い昔ではない。王朝時代から戦後数年間の辺まで)は芋が庶民の主食だった。侍の身分でさえ、その主人と嫡子以外は米を食えなかった。毎日の主食は芋であった。その芋がお菓子のように甘いものだと飽きてしまう。甘さに食傷してしまう。だから沖縄の芋は甘さ控えめなのだろう。

 カンショ(甘藷):根菜・葉菜
 ヒルガオ科の蔓性多年生草本。原産は南アメリカ北部と推定。方言名:ウム、ンム
 サツマイモ(薩摩芋)という名が標準語だが、沖縄では単にウム(芋)と呼ぶ。九州ではカライモ(唐芋)やリュウキュウイモ(琉球芋)などと呼ばれることも多いとのこと。
 先日、久高島散歩の途中、鹿児島の友人Nが芋畑の紫の花を見て、「サツマイモって花も咲くんだ」と驚いていたが、どうやら鹿児島では開花を見ないらしい。沖縄ではよく見る。淡紫色のアサガオ形の花は、文献では10〜12月に開花とあるが、アパートの畑の芋は年に3、4回は咲いていたのではないかと覚えている。が、脳軟化オジサンのことなので、記憶は不確か。
 台風にも負けない救荒作物。米が無くても生きていける。生きていれば何とかなるさあ、などとウチナーンチュを飢餓の恐怖から救い、明日は明日の風が吹くといった柔らかな気分をもたらした。カンショが沖縄に果たした役割はすごく大きい。題を変えて、いずれ詳しく述べたい。

 花

 収穫
 記:島乃ガジ丸 2004.12.10  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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