カエンサイ(ビート)
 バツイチ(昔)美女のIさんは和食の料理人で和食の飲食店を経営していた。そのIさんが去年(2012年)、新しいパートナー(と彼女が言う)Tさんと組んで新たな店を開いた。Tさんは洋食の料理人で、新しい店は和洋食の店となった。
 私が農夫(まだ見習いの身分だけど)をやっていることを知ると、Tさんからいくつかの野菜の注文、「作ってくれ、買うから」と依頼された。いくつかの野菜とはイーチョーバー(ウイキョウ)、ンスナバー(フダンソウ)、バジル、ビートなど。
 この内、バジルはよく知っていて、畑に植えて収穫して、バジリコスパゲッティーなど作ったりもした。イーチョーバーもンスナバーも知っている。イーチョーバーは記憶にないが、ンスナバーは食べたこともある。少々えぐみ(泥臭さ)のある葉野菜。

 ビートも食べたことがある。食べたのは確か数年前、ボルシチでは無く和風の煮物。近所のスーパーに置いてあり、それを買って自分で料理した。
 見た目からビートは赤カブの一種だと思い込んで、和風の煮物としたのだが、それは不味かった。ビートにはンスナバーと同じようなえぐみ(泥臭さ)があった。アクの強いホウレンソウの根に近い部分とも似ていた。「何じゃこりゃぁ!」と思って調べる。
 私の舌の感覚は正しかった。ビートもンスナバーもホウレンソウも同じアカザ科の仲間であった。「どうりで、同じような土の味がしたんだ」と思い、以降、ビートのことを他人に訊かれたら「・・・なのである」と威張っている。なお、ビートの和名がカエンサイ(火焔菜)であることは今回調べて判明したこと。これでまた一つ威張れる。

 カエンサイ(火焔菜):根菜・葉菜
 アカザ科の一・二年草 地中海沿岸地域原産 方言名:不詳
 名前の由来は資料が無く正確な所は不明だが、カエン(火焔)とは炎のことで、カエンボクやカエンカズラなどはそれらの花の色が鮮やかな紅、あるいは濃い赤色をしており、それを喩えてその名がある。本種の場合は根の色が濃い紅色をしている。
 カエンサイという名はしかし、私も全く知らなくて、ビートを調べているうちに行きあたった。そう、普通はビート、またはビーツと呼ばれている。ただ広辞苑によると、ビートは「砂糖大根。甜菜。また、広義には火焔菜を含めた総称」で、狭義にはテンサイ(サトウダイコン)を指し、カエンサイはビートに対しテーブルビートと呼ばれる。別名は他にウズマキダイコンとあるが、これは根の断面が渦巻き模様になっているから。
 学名を見ると、本種(テーブルビート)、テンサイ、フダンソウはビートの一品種となっており、フダンソウは葉を食用とするため、テンサイは砂糖を採るため、本種は根を食用とするために改良された園芸品種ということであろう。
 テンサイほどでは無いらしいが、本種の根にも甘味があり、サラダ、煮物、ピクルス、スープなどに用いられる。ロシア料理のボルシチは有名。ちなみにボルシチとは「羊肉や牛肉とトマト、ジャガイモ、タマネギ、ビートを煮込んだ料理」。葉も食用となる。
 秋植えと春植えができるとのこと。写真は近所のNさんの畑のもので去年種を播いたもの。秋植えは90日で収穫、春植えは60日で収穫が目安のようだ。 

 収穫
 記:島乃ガジ丸 2013.3.30  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
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 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
 『ニッポンの野菜』丹野清志著、株式会社玄光社発行
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