ハヤトウリ
 この時期(11月下旬)になると思い出すことがある。東京で暮らしていた頃、冬になると唇が乾いて、リップクリームが必需品となっていた。沖縄に帰ってからも冬、空気が乾燥してくると唇が荒れたので、引き続きリップクリームが必需品であった。ところが、3年前から私はリップクリームを必要としていない。友人の助言があった。
 「リップクリームに慣れると、唇が自ら乾燥を防ごうとする力を失くす。一度我慢してリップクリームを使わないようにすれば、唇もその力を取り戻す。」とのこと。
 で、その年から彼の助言通りにした。初めの頃は唇は乾燥した。蜂蜜を舐めた。そうやって一冬を過ごした。その次の年は蜂蜜を舐める回数も減った。前の冬(去年12月から今年の2月まで)は蜂蜜を舐めなくても済んだ。私の唇は本来の力を取り戻した。
 助言をしてくれたのは鹿児島に住む友人N。彼は、沖縄よりずっと冬の厳しい鹿児島にいながら、リップクリームを使わないで済んでいるらしい。強い男である。唇だけでなく、彼は体も逞しく、その面構えも強そうである。さすが薩摩隼人なのであった。

 隼人とはハヤトとも読むが、広辞苑によると正式にはハヤヒトと読むらしい。「古代の九州南部に住み、風俗習慣を異にして、しばしば大和の政権に反抗した人々。」とのことである。「大和の政権に反抗した人々」なのである。さすが、強いのである。
 ハヤトウリは、その隼人に名前が由来するが、強い瓜という意味では無い。

 ハヤトウリ(隼人瓜):野菜
 ウリ科の多年生蔓性草本 熱帯アメリカ原産 方言名:チャヨテ
 日本に伝わったのは1917年で、アメリカから鹿児島へ導入されたとのこと。そこからハヤト(隼人)ウリという名前になったらしい。
 巻蔓を出し、他のものに絡み付いて伸びる。熱帯では多年生、温帯では宿根生。9月頃から開花を始める。開花後15〜20日で収穫できる。果実は西洋梨のような形をしており、主に漬物として利用される。白色種と緑色種があり、緑色種は青臭いが、白色種は生食にも向く。その他、澱粉を含む塊根も食用。若芽を茹でて食用とする。

 実
 記:島乃ガジ丸 2006.11.20  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
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