ハマボウフウ
 ハマボウフウという植物があるということはもう何年も前から知っていた。図鑑の写真からその姿もおぼろげながら頭の片隅に記憶されていた。何年も前というのがだいたいいつ頃かということも、今調べて判明した。2005年8月のことだ。なので、約7年前ということになる。その頃、ボタンボウフウを紹介している。
 ボタンボウフウはウチナーグチでサクナと言う。有名な薬草だ。有名なので私も若い頃から知っていた。以来、民家の庭先にあるのを何度か見ている。そのサクナを紹介する時に文献を調べ、図鑑を見ている時にハマボウフウの存在も知った。サクナと同じく薬草であり、同じセリ科であり、同じく海岸に生えている植物だ。
 2005年8月からこれまで(2012年4月)何度も、おそらく70回以上(1年に10回以上)は海岸を散歩している。にもかかわらず、ハマボウフウに私は出会っていない。いや、出会ったことはあるけど私が気付かなかっただけかもしれない。何しろ沖縄の海ときたら、歩いている内に何もかも忘れてしまうくらい気持ちいい風が吹き、気持ちいい音が聞こえ、気持ちいい匂いがする。頭がボーっとしてくる。目は節穴になって行く。春の海ならなおさらだ。でも、それでいいのだ、それが幸せちゅーもんだ。

 今年の3月、伊平屋伊是名旅に出かけた。連れが2人いた。伊平屋の海岸を歩いた。連れがいると海岸を散歩しても私の頭はボーっとはしないようで、私の目も節穴にはならないようで、すぐに見つけた。「あっ、あった、ハマボウフウ」、頭の片隅にあった図鑑の写真が思い浮かんで、実物とは初対面だったが、すぐにそれと判った。

 ハマボウフウ(浜防風):薬草
 セリ科の多年草 北海道〜南西諸島に分布 方言名:ボーフー
 名前の由来、はっきりとした資料はないが、ボウフウは同じくセリ科の多年草で「根は漢方生薬の防風」(広辞苑)ということから。本種はそれと同科同属で「海浜の砂地に自生」(広辞苑)するボウフウであることからハマがつくと思われる。
 ボウフウ、ボタンボウフウ、ハマボウフウ共に広辞苑に記載があり、本土でも普通に見られる植物のようである。沖縄でもこのハマボウフウは海岸の砂浜でよく見かける。しかしながら、ハマボウフウはボタンボウフウに比べると馴染みが薄い。方言名も和名のボウフウを単に沖縄読みしただけで、沖縄独自の言葉では無い。
 サクナ(ボタンボウフウ)が薬草として有名だが、本種もまた薬用になる。その根はボウフウの根の代用として使われ、若葉は刺身のツマになるとのこと。私は知らなかったが野菜として食されるようだ。葉をサラダやお浸しにして食すとのこと。
 茎の先に傘状の花序をつけ白い花を咲かせる。開花期、広辞苑にも参考文献にも「夏」とあったが、文献の写真も私の写真も3月、ということで、春から夏としておく。

 花
 記:島乃ガジ丸 2012.4.17  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
inserted by FC2 system