エダマメ
 もう15年ほども前のことになるか、自然農法を実践している友人に農業を教えてもらっていた。授業料は、農作業を手伝うことと相殺。私にしてみれば、ただで実技まで教えてもらい、その上、収穫作物の一部を頂いていた。ありがたいことであった。
 「新鮮なエダマメが食べたい。エダマメ作って、友達呼んで、エダマメパーティーしようぜ。」とある日、私が提案したら、彼女も賛成してくれて、
 「2月の初めに種を蒔いて、5月の連休の頃に収穫できるようにしよう。」となった。
 種を蒔く日が来て、たくさん(はっきり覚えていないが200粒位)のエダマメの種を半分ずつに分けて、それぞれを袋に入れ、その一つを私に寄越す。植えつける場所は前日までに準備は済んでいたので、さっそく蒔こうと私が歩き出したら、
 「ちょっと待って、すぐに蒔いたらだめよ。注意することがいくつかある。先ず、エダマメの種が外から見えないよう袋は閉じておくこと。それから辺りを見回して、近くにハトがいないことを確かめること。そして、種を袋から取り出して土の中に埋めるまで手の中に種を隠して、外から見えないようにすること。蒔いたら、その跡を叩いて、どこに蒔いたか判らないようにすること。以上に気をつけてね。」と言う。
 「どういうことだ?」と訊くと
 「エダマメの種はハトの大好物なのよ。だから近くにハトがいないことを確かめる必要があって、それでも、どこかに潜んで見ているかもしれないので、種が見えないように細心の注意が必要なのよ。」と答える。ハトがどこかから密かに見張っていて、蒔いた種を穿り返して食う?まさか、ハトの小さな脳みそがそんなこと、とその時は半信半疑。

 毎年、私はアパートの畑にエダマメを植えている。もう8年くらいになる。過去7回はだいたい蒔いた種の半分から8割以上はちゃんと成育し、実もつけた。種の発芽率を考えればだいたいそんなもんで十分であろう。しかし、今年のエダマメはたったの2株しか生育しなかった。今まで成功していたので油断があったようだ。ハトが狙っていることをすっかり忘れていたのだ。アパートの周りにはキジバトが数羽常駐しており、ズアカアオバトもたまにやってくる。種を蒔いた後、翌日には掘り返された跡が残っていた。ハトの仕業に違いないのであった。半信半疑が今年になって、やっと確信になった。ハトは豆鉄砲だけではなく、エダマメの豆をもまた、よく食うのであった。

 エダマメ(枝豆):豆類
 マメ科の一年生草本 原産地はアジア 方言名:無し
 ダイズが硬くなる前の未熟なものをエダマメという。2月から3月に苗の植付けをし、3ヵ月後に収穫する。放っておくと莢が黄色くなり、豆が硬くなって、ダイズとなるが、うっかりダイズにしてしまっても、大豆として食せる。
 沖縄でのダイズ栽培は18世紀初めからあったらしい。エダマメ栽培も古くからあったと想像される。昭和初期から復帰後までエダマメは県外出荷もしていたとある。現在では栽培農家は少ない。沖縄のスーパーに並ぶエダマメのほとんどは他県からのもの。
 私の畑に、少なくとも60粒以上は植えたエダマメの種は、たった2株だけが育った。厳しい生存競争を勝ち残って成育し、実をつけたたった2株のエダマメであったが、その内の1株は収穫が遅れてダイズとなってしまっている。

 収穫
 記:島乃ガジ丸 2005.6.28  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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