アキノワスレグサ |
ワスレナグサ(勿忘草)は、ヨーロッパ原産のムラサキ科の多年草であるが、その名前の由来は英語名のforget me notからきているらしい。ロマンチックないい名前だ。ワスレナグサが出てくる歌謡曲が昔あった。歌っている歌手も題名も覚えていないが、 別れても 別れても 心の奥に いつまでも いつまでも 覚えておいて欲しいから 幸せ祈る 心を込めて 勿忘草を あなたに という詩だったと思う。なんとも奥ゆかしい。心豊かな歌である。しかし、残念ながら、私はワスレナグサという植物を知らない。沖縄には無いのかもしれない。 沖縄にあるのはアキノワスレグサという植物。秋になったら付き合っていた恋人のこともさっぱり忘れてしまうという意味であるならば、なんとも心淋しい草であるが、ホントのところは、「憂いを忘れる草」ということらしい。優しい草なのである。 アキノワスレグサ(秋の忘れ草):薬用・野菜 ユリ科の多年生草本 原産分布は日本、台湾 方言名:クヮンソー 近縁種のヤブカンゾウは、身につけると物思いを忘れるという俗説からワスレグサ(忘れ草)という別称があり、本種は秋に花が咲くことからアキノワスレグサという名前。 藪のカンゾウがあれば、藪でないカンゾウもあるかというと、ある。何も付かないただのカンゾウ。カンゾウは同じくユリ科だが、一年生草本で、中国原産。また、野のカンゾウということでノカンゾウというのもある。ヘメロカリスという名で園芸店に並んでいるのは、主にこれ。本種アキノワスレグサは、そのノカンゾウの一種。 カンゾウ(萱草)は橙赤色の一日花、夏に咲く。ヤブカンゾウ(藪萱草)は同じく橙赤色の一日花で夏に咲くが、八重咲き。若葉が食用となる。ノカンゾウ(野萱草)は黄赤色の一日花、ヤブカンゾウに似ているが八重咲きにはならない。 根茎が薬用に、葉柄部と花が料理に用いられる。花はロート状で橙黄色。 花 アキノワスレグサ 学名:Hemerocallis fulva L.var. sempervirens M.Hotta 花期:秋 ノカンゾウ(ヘメロカリス) 学名:Hemerocallis fulva L.var. longituba Maxim 花期:夏 ヤブカンゾウ(ワスレグサ) 学名:Hemerocallis fulva form. Kwanso 花期:夏 名前はこの花を見て憂いを忘れるという中国の故事からきている。 |
記:島乃ガジ丸 2006.4.2 ガジ丸ホーム 沖縄の草木 |
参考文献 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行 |