ヤエヤマアオキ
 ある日、ある海岸を歩いていたら、妙な植物を発見した。浜辺へ抜ける細い道の両側に数本ずつ立っているその樹木は、高さが2mから3mくらい。何が妙かというと、その実の形が妙であり、花のつき方がさらに妙であった。
 どの木にも実はいくつかついていて、そのどれ一つとして同じ形のものは無い。モコモコとしたいびつな卵型。実によって、そのモコモコ具合が異なっている。花は、その実のモコモコの出っ張った先から首を出し、花びらを広げている。白い5枚の花びらは漫画で描くようにきれいな星型で、直径1cmほどに広げている。広げる前の蕾は、モコモコの実から飛び出したツノのようにも見える。後で調べようと思って、写真を撮っておいた。
 先週、パソコン注文のためにパソコン制作をしている友人を訪ねた時、その事務所のベランダに海岸で見たのと同じ植物が鉢植えとして置いてあった。
 「この木、何ていう名前?調べようと思っていたんだ。」と訊くと
 「ノニだよ。」と答えた。
 「ノニって、あのノニか。最近ブームの、健康食品の?」
 「そう、和名はヤエヤマアオキって言う。」
 “ある”海岸と、場所をはっきり記さなかったのは、ノニは今ブームで、野生のノニがどんどん掘り取られて少なくなっているから場所は言わない方がいい、という彼のアドバイスがあったから。今なお、生産は需要に追いついていないらしい。
 もう一年以上も前のことだったか、よく行く喫茶店で、そこに集まるオバサン連中の一人に「ノニって知ってる?売れるらしいよ。栽培してみたら。」と勧められたことがある。その時は「何だそれ。」と相手にしなかったのだが、今度会った時に、「野生のノニを見つけた。今ブームらしいね。」などと話をしたら、こう言われそうだ。「だから言ったノニ」

 ヤエヤマアオキ(八重山青木):果樹
 アカネ科の常緑中高木。原産は沖縄、東南アジア、オセアニア。方言名:バマアコウ
 果実が空洞になっており、水に浮かぶ。海岸端に自生していて、種が波に運ばれ、別の海岸へと漂着し、環境が適していれば、そこでまた、育つ。
 ノニは、ポリネシア辺りの言葉らしい。現地では、神様の贈り物と呼ばれるくらい薬として重宝されているらしいが、最近、ブームになるまで、沖縄で食用にされていたかどうかについては調査が無く不明。私の周辺のお年寄りに訊いた限りでは、ヤエヤマアオキの実は食料では無く、その樹皮や根が染料として用いられているとのこと。テレビのバラエティー番組で罰ゲームに用いられるくらいの味だ。いくら健康に良いとはいえ、私は飲みたいなどと思わない。ウチナーンチュは不味いものは食わない、というわけだ。
 新鮮な果実は飲む薬としてだけではなく、シャンプーとしても使えるらしい。

 花
 記:島乃ガジ丸 2004.12.21  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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