ウメ
 10年ほど前、茨城県の水戸偕楽園を訪れた。水戸は納豆で有名だが、黄門でも有名だが、水戸偕楽園は梅の花で有名。白梅、紅梅の梅林が、季節になると見事に咲き誇るらしい。偕楽園は梅で有名ということは、私もだいぶ前から知っていたが、でも、その時、私は梅の花を見ることができなかった。偕楽園を訪れたのは12月であった。
 ウメは紅、白だけでなく、紅白の間の色、絞りの入ったもの、花びらの少ないの、多いのといろいろな種類があることを、偕楽園のパンフレットかなんかで知った。古くから日本で愛された花であるので、実生からの突然変異があったり、愛好家による品種の育成も多かったのだろう。ウメは日本人に愛され続け、今なお、花は人の眼を楽しませ、その果実は人の口を楽しませる。「梅に鶯」と言うが、「梅に日本人」もまた似合う。

 ウチナーンチュの私はウメの花の思い出が無い。沖縄にウメの木が少ないからである。近所や親戚の庭、あるいは公園などにウメの木は、たぶん無かった。東京に5年間住んでいたので、その頃梅の花も見たではあろうが、記憶に残っていない。当時は、花より団子より酒の生活であったからだ。桜はよく覚えている。花見の酒で覚えている。
 知人の庭に梅の木がある。職場の庭にもある。が、それは珍しいと言っていい。沖縄で梅の実を収穫して梅干を作っているなんて無かろう、と思っていたのだが、数年前、ヤンバル(本島北部)で梅林を見た。そこでは、その実を収穫して梅干を作っていた。

 ウメ(梅):果樹・添景
 バラ科サクラ属の落葉高木 原産は中国 方言名:ンミ
 梅酒を仕込む時期である7月頃になると、スーパーの店頭に梅の実とホワイトリカーと氷砂糖と広口瓶がたくさん並ぶ。ウメの実は大粒、中粒、小粒と何種かある。ウメはまた、花を観賞する種類もいくつかあるらしい。それらからしても、ウメには多くの品種があることが判る。それは、文献を開くまでも無く、私も何となく承知していた。
 たくさんの品種があるのなら、沖縄の亜熱帯気候に適したウメも多いはず、と思うのだが、沖縄の公園、民家の庭にウメの木はあまり見ない。しかし、古い時代から梅干は沖縄でも食卓にのぼった。おにぎりの中身は梅干と油味噌が、昔は双璧。
 日本には古い時代に中国から渡来し、古い時代から花が愛でられ、古い時代から梅干も愛されてきたようだ。花は水戸偕楽園、梅干は紀州が有名。

 花

 実
 記:島乃ガジ丸 2005.8.11  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
inserted by FC2 system