テンニンカ
 写真を撮ってから数ヶ月も経つと、衰えた私の脳味噌は写真を撮った場所を概ね忘れてしまう。しかし、デジカメの写真には日付が記録される。その日付と日記を照らし合わせれば、写真の場所もだいたい特定される。
 テンニンカの写真を撮ったのは一昨年、2007年の8月だ。その時、テンニンカは実を付けていた。後日調べて、開花期は5月から6月であることを知る。
 テンニンカは「天の人のような花」という意味だと思うが、文献の写真を見ると、その通りかもしれないと思う。写真による判断だが、美しい。ところが、ウチナーグチ(沖縄口)ではヱンチュヌミミグヮーと言うらしい。「ねずみの耳」という意味だ。文献の写真を見ると、そう見えなくも無い。「天の人のような花」と「ねずみの耳」では受ける感じが大きく異なる。倭人とウチナーンチュの感性には隔たりがあるようだ。
 で、その花、ぜひとも実物にお目にかかりたいと思っていたが、去年も今年も写真を撮りに行けなかった。写真の日付の日記を見ると、「今日は一日現場、楽な仕事だった。」としかなく、撮った場所が判らない。写真をマジマジと見つめても、場所がどこなのか全く思い出せない。おそらくこれから先も思い出せないであろう。というわけで、テンニンカ、花がきれいらしいが、花の写真のないまま紹介。

 テンニンカ(天人花):添景・果樹
 フトモモ科の常緑低木 原産分布は沖縄、東南アジア 方言名:テーニー
 淡紅、あるいは紅紫色の美しく芳香のある花を咲かす。色も形も清楚で上品な感じを受ける。テンニンカという名前、その漢字の天人花が意味するところは、天に住まう人のような花、つまり、高貴な花ということだろうが、なるほどと肯ける。
 方言名のテーニーは、テンニンカのカを省いた沖縄読みであろう。天人は、沖縄読みではアマンチュとなる。よって、沖縄に自生していたにも関わらず、倭語のテンニンカが言葉としては先だったようだ。ところが、方言名は他にヱンチュヌミミグヮーともある。これはいかにも沖縄らしい。倭人が「天の人のような花」と称したものを、昔のウチナーンチュたちは「鼠の耳」と呼んだ。ヱンチュ(鼠)ヌ(の)ミミ(耳)グヮー(小)ということ。語尾のグヮー(小)は「○○ちゃん」といったような意味。
 高さは3mほどになる。開花期は5月から6月。甘さのある果実は生食もでき、ジャムなどに加工もされる。紫色の楕円形、夏に熟す。

 花 後日、海洋博公園で見つけた写真。

 実
 記:島乃ガジ丸 2009.7.28  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
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