レイシ
 私は寝る時、真っ暗であることを望む。ビデオデッキについているデジタル時計の微かな明かりでさえ、なるべくなら暗くなって欲しいと思うくらいである。私はまた、静かであることも望む。これはしかし、周りに緑が多いという私好みの環境にいるお陰で、望みは叶えられない。夜はカエルの声、虫の声、朝は鳥の声、蝉の声が煩い。
 暗闇を望むからといって、私は暗いもの、悪魔的なものを好んでいるわけでは無い。ミラーボールの明かりの中、大きな声でカラオケを歌うパーティーよりも、夜空の月を眺めながら、一人静かに酒を飲む方が好きだということである。英語のpeaceは「平和」という意味もあるが、「静か」という意味も持つ。私は静寂が好きで、平和を好む。
 暗闇は私にとって恐ろしいものでは無く、静寂をもたらしてくれる温もりのようなものなのであるが、それはまた私が、霊感が弱いというお陰でもある。私は幽霊というものを見たことが無い。まあ、この先見たいとも思ってない。私に霊視は要らない。

 霊視は要らないが、レイシは要る。たくさんある果物の中でもレイシは私の好きなものの上位にある。正確なことは判らないが、沖縄にはレイシに似たリュウガン(別項で紹介)の方が古くからあったと思われる。リュウガンは子供の頃に食った覚えがあるが、レイシを初めて食ったのは、まだ比較的新しくて、15年ほど前のことである。
 従姉が結婚した相手の親戚の家にレイシの木があり、その収穫したものを食べさせてもらったのだ。初めは、それをリュウガンだとばかり思って、「へぇ、リュウガンってこんなに美味しいものだったっけ。」と感想を言ったら、「リュウガンじゃないわよ。レイシよ。一般にはライチって言ううけど、それがこれよ。」と教えられた。

 レイシ(茘枝):添景・果樹
 ムクロジ科の常緑高木 原産分布は中国 方言名:リィチ、リーチ
 ライチという名でよく知られているが、和名はレイシ。漢字の茘枝からきたものと思われる。ライチはおそらく英語名のLichiから。方言名のリィチは、漢字の茘枝を中国語読みするとそのように聞こえたのであろう。ウチナーンチュは欧米人と似たような耳の感度を持っていたということになる。倭人は、やまと言葉の発音を優先させたのであろう。
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』に「唐の玄宗皇帝が楊貴妃のために取り寄せた」との記述があった。それほど大昔から、それほど美味とされた果物。ジューシーで薫り高く、甘くて、ほんの少し酸味がある。私も大好き。皮が剥きやすく、大きめの種も除去しやすい。そういう点でも、面倒臭がり屋の私向き。結実期は6月から7月。
 樹姿が良いので庭木としても十分使える。ただ、強風に弱いので台風の際にはそれなりの対策を要する。根や種は薬としても利用されているらしい。

 花

 実
 記:島乃ガジ丸 2005.8.8  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
inserted by FC2 system