マンゴー
 数年前に、東南アジアの、どこの国かは覚えていないが、道路を歩く人々を離れた場所から写した町の風景写真を見た。歩く人々のその後ろには、高さ20mはありそうな大きな街路樹が並んでいた。写真の解説には、街路樹はマンゴーの木とあった。
 「へぇー、ずいぶん大きくなるもんだ」が第一の印象。「優良な緑陰樹となって、熱帯の灼熱の太陽から人々を守っているんだろうな」と次に思った。
 さて、できた実はどうするのだろう。道路を管理する役所の所有物となるのか。でっかい木が何本も連なっているんだ。収穫量も半端じゃなかろう。役所の財源となっているのか。それとも、できた実はみんなのもので、道行く人々が勝手に採っているのだろうか。
 私の住んでいるアパートの隣の家には大きなヤマモモの木があり、それと並んで大きなマンゴーの木がある。このマンゴーの木は6月から7月にかけて実が成る。実は成るが、その家の人は収穫していないようで、実は熟したらそのままアスファルトの上に落ちて腐っていく。手の届くところにあるものさえほったらかし。不思議に思って、果樹について詳しい同僚のTに訊くと、マンゴーといっても美味しくないものもあるとのこと。現在、沖縄で栽培されているマンゴーの主流はアップルマンゴーという品種らしい。
 人間にとっては美味しくなくとも、これをご馳走にしているものがいる。近所の小学校を住処にしているオオコウモリだ。夜、羽音をたてながらやってきて、マンゴーに下り立つのを2度見た。姿は見ていないが、鳴き声は何十回となく聞いている。
 東南アジアの、どこやらの国の、街路樹となっているマンゴーの木は、食べても美味しくない種類のマンゴーなのだろう。収穫しても役所の財源にはならないし、採って食べる人もいないのだ。ただ、コウモリや鳥達のご馳走にはなっているに違いない。

 マンゴー:果樹
 ウルシ科の常緑高木。国内では奄美以南に分布する。方言名:無し
 沖縄県には古く(80年以上前)から導入されていたらしいが、県の優良な農産品として注目されるようになったのは、20年くらい前からだと記憶している。
 マンゴーは結実期に雨に打たれると落果するらしい。結実期はちょうど沖縄の梅雨時なので露地栽培では難しく、ハウス栽培となる。職場のマンゴーは露地植え。それでも何とか1個だけは結実し、大きくなった。1週間後あたりには収穫できるかと思って、確かめに行ったら、実が割れていて、蟻や名の判らぬ虫がたかっていた。食えそうも無かった。
 種類によって異なるようだが、収穫期は主に7月、今、どこのスーパーに行っても果物の陳列棚にマンゴーが並んでいる。中元期でもあり、お中元商品の棚にも並ぶ。贈り物としても人気が高いようだ。宮古島、豊見城市などが主な生産地。

 花

 実
 記:2004.8.10 島乃ガジ丸  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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