ココヤシ
 何年か前にベストセラーになった『地図を読めない女・・・』を当時、私も読んだ。「なるほど、だからそうなのか、ガッテン。」という感想を持った。先週、姉夫婦と飲む機会があって、その中で、ある事柄(何だったかは忘れた)で男はどうの、女はどうのとなった時に、姉が怒って、「男がとか女がとかって私は嫌いなの!『地図を読めない女・・・』なんて大嘘よ!私の周りには地図の読める女がいっぱいいるわ!」と言う。
 義兄も私も全ての女がそうだなんて言ってはいない。『地図を読めない女・・・』の著者だって、全ての女が地図を読めないなんて言っているわけではない。「概ねの女」、あるいは「典型の女」の話をしているのだ。典型で語ったほうが論理的に解りやすくなるし、「そうでない人もいるが、多くの」という言葉を端折るのは、それは言わなくても当然のことと思っているからだ。聞いている方だってそれは理解しているはずだ。
 姉の血液型はAB型、彼女の話は突然、何の前触れも無くあちこち飛ぶので、議論をしたりすると私の脳味噌はすごく疲れる。その夜も、「おい、ちょっと待て、さっきの話はどこへ行ったんだ。今の話とどう関わるんだ。」ということが何度もあって、「AB型の性格はこうなの」と言う。・・・おい、おい、ちょっと待てよ、なのである。AB型がどうの、O型はどうの、なんてのも典型の話ではないか?男女の典型がだめで、血液型の典型の話は楽しそうに話す、そんな姉の感性が、私にはまったく理解できなかった。

 南の島の典型を描くとき、青い空、青い海、白い砂浜を書く、そして、砂浜にはヤシの木が立っている。空と海と砂浜だけではそこが南の島だと確証できないが、ヤシの木が1本あるだけで南を感じさせてくれる。もちろん、南の島の浜辺の全てにヤシの木が立っているわけでは無い。けれども、ヤシの木を描くことで、説明しなくとも絵を見るだけでそこが南の島だと判る。互いがそれを理解すると次に話が進みやすい。これが典型の効果。
 南の島の浜辺にあるヤシの木は概ね(全てでは無い)ココヤシである。ココヤシの果実は海水に浮いて漂流する。「名も知らぬ遠き島より流れ寄るヤシ実」の典型であろう。
     
 ココヤシ(ここ椰子):街路・公園・果樹
 ヤシ科の常緑高木 原産分布は熱帯アジア、太平洋諸島 方言名:ヤシ・ヤーシ
 ご存知ココナッツのココヤシ。ココは属名。ココナッツはココヤシの果実のこと。沖縄に元々自生していたわけではないのに方言名がある、しかもヤシ。ココヤシの姿を見て、いかにもヤシらしいヤシと昔のウチナーンチュは感じたのかもしれない。
 若い果実の胚乳は液状で飲料となる。完熟すると白い固形状となって、それを乾燥させたものをコプラといい、その脂肪から石鹸、バターなどが作られる。果実の繊維も利用される。ココヤシはその他にも、樹液からは砂糖が採れ、また、ヤシ酒に加工され、葉や幹は建築などにも使われる。ナツメヤシと並んで重要な栽培植物となっている。
 沖縄でも実はできる。国道58号線の街路樹のココヤシも時期には多くの実をつけ、その際、落下防止のネットがかけられていたりする。結実期は7月から10月。
 高さ20mにまでなるが、幹はしっかりしていて、根張りも強く、台風で倒れたなどということをほとんど聞かない。また、潮風に強いので海岸近くの公園樹、街路樹としても適している。沖縄の海辺のリゾートホテルでこのヤシを多く見る。いかにも南国の樹木。

 実
 記:島乃ガジ丸 2005.8.8  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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