クダモノタマゴ
 今、私の部屋にはリンゴ1個とミカンが数個、イチゴが1パックある。これから買い物に行って、明日(月曜日)から木曜日昼までの食料を仕入れるが、その中にはバナナが含まれている。この季節は旬の果物が多いので特別に種類が豊富なのであるが、年間を通してみても、私の部屋には少なくとも1種類の果物が常時置かれている。
 若い頃は、果物がさほど好きということは無かった。今でもじつは、大好物というわけでは無い。果糖が脳の働きを良くすると聞いて、私の衰えた脳味噌に少しでも栄養を与えてやろうということなのである。少なくとも、どうせ甘いものを取るのなら、果物から取る方がケーキや清涼飲料水の砂糖に比べて、ずっと健康的だろうと思うのである。
 今日の買い物の中には鶏卵も含まれる。卵はだいたい1日1個は食っている。卵焼き(沖縄の卵焼きは塩味)、目玉焼き、ゆで卵などにして食っているが、いずれにせよ、卵もまた大好物というわけでは無い。卵は完全栄養食であるということを聞いて、とりあえず、1日1個食っておけばいいか、と思って食っている。

 卵のような栄養があって、果物のような果糖を含んでいる食い物があれば、それ1個で卵と果物両方の役を担うことができる。お金も、食べる時間も節約できることになる。そんな便利な食い物は・・・たぶん無い。けれども、そんな便利な食い物だと勘違いしてしまいそうな食い物はある。クダモノタマゴと言う。果物のような卵ということでは無く、卵のような果物ということ。外見が卵では無く、果肉が卵に似ているらしい。

 クダモノタマゴ(果物卵):果物
 アカテツ科の常緑中木 西インド諸島、熱帯アメリカ原産 方言名:なし
 別名をカニステルというが、じつは私は、カニステルという名前しか知らなかった。クダモノタマゴという和名があることは、『沖縄園芸植物大図鑑』で初めて知った。おそらく私だけで無く、カニステルは知っているがクダモノタマゴは知らない、という人は多かろう。カニステルは蟹捨と書く、のでは無い。つまり「食べると不味く、カニも捨てる」ということからきているわけでは無い。カニステルは英語名のCanistelからであろう。英語名は他にEgg fruitともあり、これが、クダモノタマゴという名前の由来と思われる。
 花は緑白色で小さい。果実の形には卵形、球形、扁球形など品種によっていろいろあるが、民家の庭などでよく見かけるものは長径10センチほどの卵形のもの。その先が細く尖り独特の形になるため、すぐにそれと判る。熟すると鮮やかなオレンジ色になる。
 スーパーなどで販売されているのをあまり見ない。私は食したことがないので美味いとも不味いとも言えないが、「果実は卵の黄身に似た芳香があり」と文献にあった。また、別の文献には「果汁を欠き、ゆで卵の黄身に酷似し、風味はすこぶる濃厚で、少量食べただけで飽満になる」とあった。デザートには不向きのようである。

 花

 実
 記:島乃ガジ丸 2006.1.22  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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