ブドウ
 子供の頃、私の家には離れが1棟あり、2世帯が住む貸部屋となっていた。それぞれが1DKという小さな部屋の1つには戦争未亡人であった伯母(父の姉)が住んでいた。
 離れの裏側は、隣地境界の塀との間が1メートルほど空いていて、土面であった。ある年、私が小学校3、4年生の頃だったと覚えているが、伯母はそこに棚を設け、ブドウを植えた。ブドウはすくすくと育ち、棚はブドウの葉で覆われた。
 ブドウの果実が実りだした頃のある日、私は伯母の部屋で昼寝した。ベッドは窓の傍にあった。開け放した窓の半分ほどの高さにブドウ棚があり、涼しげな景色であった。
 寝入ってからしばらくして、体がムズムズするのを感じて目が覚めた。見ると、私の体を青虫が這っていた。子供の頃の記憶で確かでは無いが、あるいは、子供の目からは大きく見えたのかしらないが、10センチほどの長さにも見えた大きな青虫であった。私は声にならない叫び声をあげ、虫を手で払い、飛び起きた。ベッドの上には同じ虫が何匹も這っていた。開け放した窓から入ってきたみたいであった。

 ブドウというと、すぐに上記のことを思い出す。それほど、「青虫が体を這う」は少年にとっては衝撃的な出来事なのであった。青虫は少年にとって、叫び声が出るほど気味悪いものだったのだ。オジサンとなった今では触れるんだけどね。
 その時の青虫は「ブドウ虫」だと父は言っていたが、昔のことなので今となっては確かめる術は無い。ブドウ虫は「ブドウスカシバとムラサキスカシバの幼虫」(広辞苑)とのことだが、それらがその時の虫なのかどうかも今となっては不明。
 スーパーには本土産のブドウが並んでいる。秋になると巨峰が旬となり、私も毎年、数回は買って食べている。巨峰以外のブドウはここ数年食べていない。何故かというと、ブドウは種が面倒。巨峰も種があるが、大きいので取り除きやすいからだ。

 ブドウ(葡萄):果樹
 ブドウ科の蔓性落葉低木 原産はヨーロッパ、北米 方言名:ブドー
 ブドウは「ブドウ科ブドウ属の蔓性落葉低木の総称」(広辞苑)で、「西域の土語に由来するという」と名前の由来もあった。どこかの方言とのことだが、詳細は不明。
 葡萄はブドウの他、エビとも読み、エビカズラ(葡萄葛)という植物もある。エビカズラはヤマブドウの古名とのこと。ヤマブドウ(山葡萄)は日本の山地に自生する。
 『沖縄園芸百科』に「北海道から沖縄まで全国で栽培されている」とあり、また、「沖縄では昭和57年に巨峰が取り入れられ産業として本格的にスタートしました」ともあるが、私はまだ沖縄産の巨峰を口にしたことが無い。同書に巨峰の収穫期は7月と12月とあるが、その時期にスーパーなどで沖縄産巨峰が並んでいるのも見たことが無い。自然農法をやっていた知人の畑で、まだ実は付いていなかったが巨峰の木を見せてもらったことはある。おそらく、沖縄では生産数が少ないのだと思われる。
 「ヨーロッパ系と北米原産の系統がある」(広辞苑)とのこと。生食に適したブドウが何種類もあり、ワインに適したブドウもたくさんあるらしい。生食、ワインの他に、乾しブドウやジュースにも利用される。
 品種によって違うようだが、収穫期は概ね秋。初夏に淡緑色の小さな花を咲かせる。巻きひげで他のものに絡み付いて伸びる。

 実
 記:島乃ガジ丸 2008.1.27  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
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