ビワ
 去年、東北を旅した。平泉は目的の地では無かったが、日程と宿泊の都合で立ち寄ることになった。訪ねる予定では無かった平泉だが、興味を引くものが多くあった。特に、藤原三代の国造りと治世には深い関心を持った。平和な世を作るという強い意志が存在し、ある一定期間ではあったが、庶民に幸福をもたらせていたのではないだろうか。初代は清衡だったか、国のあり方について明確なビジョンを持っていたのだろう。彼の子、孫がまた、それをしっかり受け継いで、理想の国造りに励んだのであろう。
 今年の大河ドラマは『義経』。義経が平泉で暮らす時期を描いた2回ばかりを観た。平泉と藤原氏がどう描かれているかに関心があったのだが、平泉も藤原氏もドラマの主役ではないので、さほど丁寧には描かれていない。まあ、さすが高橋秀樹と思ったくらい。
 さすが、といえばもう一人、芸達者な役者がいた。清盛役の渡哲也。彼の扮する清盛はなかなか魅力的。清盛もまた、国のあり方についてそれなりのビジョンを持っていたのだと感じた。ただ、彼の場合は、彼に続く優秀な人材がいなかったということだろう。
 それにしても、あの平和な藤原三代の時代は、乱世の源平の時代でもあったのだ、とあらためて認識した。日本国が乱世でも奥州だけは平和、なんてことはやはり、長く続けることは難しい。日本国だけが平和なんてこともこれからの時代はありえない。近くの国とも遠くの国とも仲良くしたいものだ。世界が平和であることを祈るのみである。
 さて、源平といえば『平家物語』、「祇園精舎の鐘の声、沙羅双樹の響きあり」で始まる物語は、琵琶法師によって語り継がれてきたとされている。その琵琶、私はてっきり、形が果物のビワに似ているからビワなのだろうと思っていた。が、調べると違っていた。果物のビワは枇杷と書き、楽器の方は琵琶となっている。広辞苑で琵琶の項を見ると、「胴はなすび形」と書かれ、どこにも「果物の枇杷の形に似ている」などという記述は無かった。

 随分前に、宮崎の友人からビワを頂いたことがある。「名産だから」と言っていたが、沖縄でもビワは普通にできる。植えても無いのに勝手に生えてきたりもする。わざわざ植えようとする人が少ないのは、そう美味しいものでは無いと思っているのか、どうせ植えるのなら飯にもなるパパイアの方がいいと思っているのか、不明。
 宮崎からのビワは美味しかった。沖縄にも生産者がいて、春には(もう過ぎてしまったが)スーパーにも出回る。そのビワを買ってまで私は食べたことは無い。ただ、頂き物でたまに口にする。沖縄のビワも美味しいと私は感じている。だが、ビワにはたいへん申し訳ないことだが、春の果物、買うのなら、ビワよりはイチゴを断然選んでいる。

 ビワ(枇杷):果樹・添景
 バラ科の常緑高木。原産分布は東アジア温帯南部、亜熱帯。方言名:無し
 地上部に比べて根張りが小さく台風に弱い。支柱でしっかり支えておく必要がある。白色の花は枝の先端に房状につく。開花期は11月から2月。
 本土では6月頃からとされる収穫期は、沖縄では3月下旬から4月上旬となっている。他府県に先駆けてビワを味わうことができる。近所のビワたちも3、4週間前が食べ頃となっていた。持ち主が収穫している気配の無いビワ、小鳥たちの食い物となっているのだが、私が黙って、もいで、食うわけにもいかない。葉は薬用、材は木刀などにする。

 花

 実
 記:島乃ガジ丸 2005.5.3  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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