ヤエヤマヒルギ |
マングローブとは「亜熱帯や熱帯の河口・潮間帯の泥地に発達する特異な植物群落」(広辞苑)のことで、沖縄ではメヒルギ、オヒルギ、ヤエヤマヒルギ、ハマザクロ(マヤプシキ)、ヒルギダマシ、ヒルギモドキなどがその群落を形成している。 この内、メヒルギ、オヒルギ、ヤエヤマヒルギは同じヒルギ科で互いによく似ている。不勉強の私は、若い頃からマングローブは見ていて、そこにヒルギなる名前の植物があることは知っていたが、どれがヒルギであるかを知らずにいた。不勉強の私はまた、沖縄の植物を紹介するようになったのは2004年のことだが、それから何年も経った2009年になってやっとオヒルギとメヒルギを区別できるようになった。そして、それから2年も経った今年7月になって、やっとヤエヤマヒルギを確認することができた。 私の家から車で20分程も行った所に漫湖(マンコと読む、声に出し辛いだろうが)公園がある。そこにヒルギの群落があることは何年も前から知っていた。年に1回程度は漫湖公園を散策しており、これまで3、4回はヒルギ群落のある個所も訪れている。 そして、そこには二種のヒルギがあることも認識していた。私が認識できるほどに見た目の違いがあったのだ。しかし、そのうちのどれがオヒルギなのかどれがメヒルギなのかは判らない。2009年に別の場所で見たオヒルギとメヒルギから両者を区別できるようになって、「あー、漫湖公園の一方はメヒルギなんだ」と判った。 一方はメヒルギと判ったが、もう一方はオヒルギでは無い。じゃあ何だ?ということで今年7月、ヒルギ3種の花の時期でもあったので漫湖公園に出かけた。漫湖の2種のヒルギは花を付けていた。メヒルギはもうお馴染みの花、もう一方は写真を撮って、家に帰って、図鑑と照らし合わせて調べる。何と、ヤエヤマヒルギだった。 ヤエヤマという名前から八重山地方に生息するヒルギとばかり思っていたので、そうである可能性を考えていなかったのだ。先入観は学問の敵であることを認識した。 ヤエヤマヒルギ(八重山蛭木・漂木):海浜緑化 ヒルギ科の常緑高木 沖縄以南、熱帯アジア、太平洋諸島に分布 方言名:プシキなど 名前の由来については資料が無く、不明。蛭木という字は広辞苑にあった。別の文献に漂木という字があった。沖縄本島以南に生息するが、八重山地方に多いことからヤエヤマと付いたのかもしれない。正確なところは不明。広辞苑にヒルギは「オヒルギ・メヒルギ・オオバヒルギなどの総称」とあって、本種はその一つのオオバヒルギ、私が参考にしている文献ではヤエヤマヒルギが本名で、オオバ(大葉)ヒルギを別名としてある。オヒルギやメヒルギなどに比べ葉が目立って大きいことからその名がある。それとは別にシロバナ(白花)ヒルギという別名もある。これは花の色からきている。 方言名はプシキの他、ピニキともある。 高さは10mほどになり河口汽水域に生息する。マングローブを形成する植物の中では最も塩分に強く、海側に生育する。葉が大きいことでオヒルギ、メヒルギなどと区別できるが、本種はまた、タコノキのように支柱根を出している姿にも特徴がある。幹から多数の気根を伸ばし、海底泥に入りこんで体を支えている。 花色は白、花弁の内側に目立って毛が生えている。開花期は5〜7月。果実は卵型をしていて、その下部から細長い莢のような胎生種子を伸ばす。結実期は6〜8月。 花 実 根 →参考(メヒルギとヤエヤマヒルギ) |
記:島乃ガジ丸 2011.7.30 ガジ丸ホーム 沖縄の草木 |
参考文献 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行 |