チシャノキ
 まだ私が美(?)少年だった頃、首里に一人住まいをしていた私は、首里高校に通っていたこともあって、生きている時間のほとんどを首里で過ごしていた。主に首里高のある山川町から住まいのある汀良町までの辺りをブラブラしたり、ダラダラしていた。
 首里高校の近くには玉陵(王家の墓)、守礼の門、龍潭、円覚寺など王府ゆかりの歴史的施設があり、琉球大学、沖縄キリスト教短期大学などがあった。その辺りもたまにブラブラしたりダラダラしていた私は、それらの景色が深く記憶に残っている。
 首里城が復元され、首里城公園が整備されてからはそれらの懐かしい景色の多くが失われてしまった。母校である首里高校も私が在籍していた頃とは大幅に変わっていて、懐かしさを感じることはほとんど無い。ただ、龍潭周辺はほとんど昔のままである。そこはノスタルジーに浸れる。4月のある日、そんなノスタルジーを散歩した。

 龍潭から円覚寺に向かう。途中に円鑑池があり、円鑑池には弁財天堂が浮かんでいる。弁財天堂に架かる天女橋の傍に見慣れない木を発見。花をつけている。小さいが多くがかたまっているので目立つ。白い花。写真を撮る。
 数日後、文献の写真と照らし合わせながら、何の木かを調べる。葉も花もチシャノキに似ている。ということで、チシャノキであると判断したのだが、開花期が違う。文献には6月から7月とあった。狂い咲きしたのだろうということにした。

 チシャノキ(萵苣の木):公園
 ムラサキ科の落葉高木 本州以南、南西諸島、他に分布 方言名:チサヌチ
 チシャ(萵苣)とはレタスやサラダ菜のことを指す。レタスやサラダ菜からこの木を連想することは、私にはまったくできない。葉の形が似ているとは思えない。若葉が食用になるというので、その味がレタスに似ているのかもしれない。マルバチシャノキは『緑化樹木のしおり』、『都市緑化図鑑』に記載があったが、チシャノキは庭木として人気が薄いのか、記載が無い。方言名もチシャノキは和名を単に沖縄読みしたチサヌチ。
 葉の形状で言えばむしろカキノキに似ているようで、別名をカキノキダマシと言う。別属だがカキバチシャノキというのもある。これはもっとカキノキに似る。
 高さ10mほど。葉は長楕円形で、若葉は食べられるとのこと。花は白色、枝の先に円錐花序となり多くつく。開花期、文献には6月から7月とあったが、別の文献の写真は8月、私の写真は4月のもの。果実は球形、熟すと黒褐色になる。材は器具に使われる。

 花

 葉
 記:島乃ガジ丸 2006.8.14  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
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