タイワンフウ/モミジバフウ
 学生の頃、武蔵野市に住んでいた。寒いのは苦手だったが、冬の武蔵野の景色は好きであった。ケヤキ並木の景色が好きであった。葉を全て散らし、枝ばかりになって、冬の、澄んだ青空に向かって、凛と立っているケヤキの姿が好きであった。
 漫湖公園傍の道路にフウの木の並木がある。冬になると葉を落とし、枝ばかりになる。その景色を見ると、武蔵野のケヤキをちょっと思い出す。脳廃る爺に浸れる。

 10年ほど前までテニスをやっていて、漫湖(倭人の中には、言い辛いと思われる人もいるだろうが、マンコと読む)公園のテニスコートにもたびたび通った。その時に、枝ばかりになったフウの並木を知り、人に訊いて、それがフウという名前であることも知ったのであるが、それ以来、約10年、枝ばかりになったフウの並木を私は見ていない。
 その後、フウの木にはタイワンフウとアメリカフウ(モミジバフウ)の2種が沖縄にあることを知る。タイワンフウは、葉が3つに裂け、アメリカフウは5つに裂けているということは最近になってから知った。この10年の間に何度かフウの並木道を通ってはいるが、そのフウの葉が3裂なのか5裂なのかは、脳が廃っている私なので、残念ながらまったく思い出せない。・・・と、ここまでは5月15日に書く。

 今日(19日)、金曜日の職場への出勤前に漫湖公園へ行ってきた。家からは職場とは真逆の方向にある場所へわざわざ。タイワンなのかアメリカなのか確かめるために。まだ写真が撮れて無いので、アメリカだといいなあと期待したが、タイワンであった。

 タイワンフウ(台湾楓):公園・街路
 マンサク科の落葉高木 原産分布は台湾、中国 方言名:なし
 同属近似種のアメリカフウ(モミジバフウ)は葉が5つに裂け、モミジの葉に似るが、本種は3つに裂ける。モミジバフウに対し、本種のことは単にフウとも言う。
 充てられている漢字の「楓」はカエデとも読むが、カエデはカエデ科の落葉高木の総称で、本種とは別種。葉がカエデに似ているところからその字があるのであろう。
 高さは10〜20mに達する。細い三角錐の樹形なので街路樹に向く。冬場落葉し、幹枝だけが残り、「沖縄も冬であるか」と思わせてくれる樹木の一つ。本土ではちゃんと黄葉するらしいが、沖縄ではそう鮮やかな色にはならない。
 花は春に咲くが、あまり目立たない。そのすぐ後の果実が、棘のある球形で見た目に面白く、装飾用に用いられるとのこと。幹から採れる樹脂を楓香脂(ふうこうし)といい、解毒、止血、結核などの薬用として使われる。果実の特徴から別名イガカエデ。

 実

 並木

 モミジバフウ(紅葉楓):公園・街路
 マンサク科の落葉高木 原産分布はアメリカ東部、メキシコ 方言名:なし
 葉が5つに裂け掌状になり、それがモミジの葉に似ているところからモミジバフウという名前であるようだが、漢字の楓自体がモミジに似ていることを指していると考えられるので、「屋上屋を架す」みたいなことになっている。台湾産のタイワンフウに対し、アメリカ産なのでアメリカフウという別名もある。
 記:島乃ガジ丸 2006.5.15  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
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