シマグワ
 赤、紫、黒といった色に熟したナンデーシー(桑の実)は甘酸っぱくて美味しかった。子供の頃は木登り遊びをしながら良く食べた。
 鳥たちが桑の実を食べて糞をする。糞には桑の種が混ざっていて、落ちたところから芽が出てくる。植えては無いのに生えてくることを沖縄口(ウチナーグチ)ではナンクルミーと云う。ナンクルは「なるように」とか「自然に」とかといった意味。ナンクルナイサは多くのウチナーンチュ(沖縄人)のモットー、「なるようにしかならないさぁ」となる。ミーは「芽生える」とか「実る」とかいった意味。
 鳥によって種が運ばれてナンクルミーする植物は、他に、ゲットウ、ハリツルマサキ、ゲッキツ、ヒカンザクラ、アカギなどがある。コンビニに行けばいくらでも美味しいお菓子が手に入る今では、シマグワの実を食べる子供をほとんど見かけない。つまり、果樹としての価値はほとんど無い。また、暴れ(自然の状態では形が整わない)木なので、狭い庭だと邪魔になる。で、ナンクルミーのシマグワは引き抜かれることが多い。
 ナンデーシーを食べると、舌が紫色に染まる。指先も染まる。うっかりすると服にも汁が飛んで、汚す。母ちゃんに怒られる。懐かしい味は、もはや想い出でしか無い。

 シマグワ(島桑):庭木・公園樹・人によっては果樹
 クワ科の落葉中高木。国内では屋久島以南に分布する。方言名:クワーギ
 成長が早く、放置しておくと樹形が乱れるため庭木として扱いにくい所もあるが、ホウオウボクやナンバンサイカチのように大木にはならないので、民家の庭でも使える。庭の一角に添景として置くと良い。小鳥たちが集まってくる食餌木にもなる。実は4〜5月。
 島桑と島の字が付いているので、本土の桑の木とはいくらか(園芸品種的な小さな)違いがあるかもしれないが、本土の桑の木を私は見たことが無いので、その辺は不明。養蚕用にその葉を用いるのは同じ。小学生の頃、理科の実験で扱った覚えがある。

 花

 実
 記:島乃ガジ丸 2004.9.27  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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