リュウキュウハリギリ
 3、4年前の春、みちのく一人旅その1(その2は去年)に出た。福島で県立美術館を見学した後、午後2時を過ぎて遅い昼飯を取る。山菜の時期だそうで、山菜を肴にビールを一杯やろうと、福島駅近くでそれらがありそうな店を見つけ、ガラガラとドアを開けて中へ入る。カウンターの向こうに60歳位のオヤジが座っていて、ジロっと睨まれた。
 オヤジはテレビを観ていたようだ。テレビは大きな音量で競馬中継をやっていた。「何で、こんな時間帯に入ってくるんだ!」といった憮然とした表情でオヤジは
 「っらしゃい」と小さな低い声で言う。馬券を買っていたんだろう。オヤジにとっては客よりも競馬中継の方が大事なようである。こっちを見てはいるが、耳はテレビから離れたくないようで、なかなか立ち上がらない。傍に立っていた奥さんと思われる人が、さっと動いて、オシボリを出し、注文を聞く。生ビールと山菜の天ぷら盛り合わせを頼む。そこでやっとオヤジは立ち上がり、天ぷらを作る。包丁を握ったところでオヤジは自分の商売を思い出したようだ。愛想笑いを浮かべて「お客さん、旅ですか」などと訊く。やっと私を客扱いしてくれたのだが、そこまで、私が店に入ってから10分ほど経っていた。
 オヤジの態度はあまり良いとは言えなかったが、天ぷらは美味しかった。特に、タラノメの天ぷらは私の好物で、それも十分に旨かった。

 タラノキは、沖縄には無い。が、それに近いものはある。従姉の亭主が私同様、酒が好きで、食い物への好奇心も強く、数年前、自分の庭にリュウキュウハリギリを植えた。リュウキュウハリギリの若芽はタラノメに近い味がすると言う。植えてから3年後くらいには十分大きくなり、新芽も収穫できるようになったのだが、沖縄の春は短い。あっというまに過ぎる。収穫できるようになった去年、そして今年と、彼も私もリュウキュウハリギリの新芽を食っていない。二人とも「好奇心はあるが、貪欲では無い」のだと褒めておこう。脳が衰えて、忘れっぽくなっているだけに過ぎないのかもしれないが・・・。

 リュウキュウハリギリ(琉球針桐):公園
 ウコギ科の落葉高木。基本種の原産分布は日本各地。方言名:ダラギ、ヤマギリ
 基本種のハリギリは日本の他、シベリア、中国にも分布している。リュウキュウハリギリはハリギリの変種で沖縄特有のもの。
 半日陰でもよく育ち、耐風、耐潮風性も強い丈夫な木。開花期は5月から7月であるが、花は特に観賞するほどのものでは無い。樹形を楽しむ。高さ10〜20mになる。
 幹、枝に鋭い棘がある。クマゼミが好んで集まる。材は器具材に使われる。

 葉

 枝
 記:島乃ガジ丸 2005.7.3  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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