オオハマボウ
 某はその1字だけでナニガシと読むが、同じ読みで何某とも表記される。名前が分からない誰か、あるいは名前を伏せておきたい誰かを表す時に用いる。「武蔵野市に住む大工の何某」というふうに用いる。某は同じ意味でボウとも読む。たとえば山田某氏といった場合、これはヤマダボウシと読む。氏を除き、山田某でも良くて。この場合はヤマダナニガシとも読めるが、ヤマダボウと呼んでもいい。
 糸満市(沖縄本島南部)に住む大浜某は、今年二十歳になったばかりの可愛い娘。大学に行けなかったところをみると、学校の勉強の成績は良くなかったのかもしれないが、ものを考える力があるという意味では賢い娘だ。賢い娘だが、高校を卒業して2年余り、進学もせず、定職にも就かず、アルバイトで日々を暮らしている。いわゆるフリーター。
 夢はあったのだが、その夢が本当に自分の望んでいるものか、それが自分の天職と言えるのかどうかと疑問を持ったまま、動けないでいるようだ。
 「大学適齢期」とは私が彼女に言った言葉。学問したいと思う時期は人それぞれ違う、やりたいと思うことが見つかった時に、それをやればいいさ、という内容だった。しかし、「本当にやりたいこと」が何かを模索するあまり、それに縛られて、却って彼女の感性や発想が窮屈になっているのではないかと、今、少し反省しているところだ。
 もう一つ、大切な沖縄の美徳を教えておくべきだったのである。「本当にやりたいことなのかなんて、やってみないと判らないさあ。やってみればいいさあ。だめだったら止めればいいさあ。」という気分。つまりは、沖縄の「テーゲー主義」。

 オオハマボウという木がある。沖縄の海岸端でよく見かけるウチナーンチュにはよく知られた木。この木はまったく沖縄的で、伸ばしたい放題に枝葉を伸ばし、花を咲かせる。

 オオハマボウ(大黄槿):公園樹
 アオイ科の常緑高木。国内では屋久島以南に分布する。方言名:ユーナギー
 潮風に強いので海浜地でよく見かける。一つ一つの花は一日の寿命。朝の咲き始めは黄色で、橙色、赤色に変わって、夕方には散る。暴れ木なので庭木としては使いにくい。
 オオハマボウの樹皮からは繊維が取れる。その繊維を糸にして作る布を沖縄口でカシガーと云う。その布を用いて作った袋をカシガー袋と云う。日本語では南京袋。穀類を入れるのに用いる。昔、乞食の人たちは、カシガー袋を身にまとっていた。
 「樹皮の繊維が強いことから、昔は縄を作る材料に利用されました。葉は尻拭きとして使われました」と文献にあった。尻を拭きやすい形と大きさをしている。
 潮風に強く、海浜地に多く、花は黄色い、などとオオハマボウに似たような木がある。名前も似ていてサキシマハマボウと言う。同じアオイ科だが、属が違う。サキシマハマボウはサキシマハマボウ属、オオハマボウはハイビスカスと同じフヨウ属となっている。

 昼の花

 夕の花
 記:島乃ガジ丸 2004.9.30  ガジ丸ホーム 沖縄の草木
 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
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